山梨県甲府市出身の兄弟が、電気もガスも水道もないアフリカ・マリ共和国にある村を変えようとしている。弟がバックパッカーとしてその村を訪れたことがきっかけで、縁ができ、井戸を建設するプロジェクトを兄が立ち上げた。現在、クラウドファンディングで建設費用100万円を集めている。このプロジェクトの発起人・網倉正人さんに寄稿してもらった。
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マリ共和国へ行くきっかけとなったのは、弟の彩人からマリ共和国の状況を聞いたことでした。弟は、3年前の2013年に、バックパッカーとしてマリ共和国を訪れていました。弟はそのときに、現地パートナーのマリックと出会い、彼の滞在していた村へ、電気の供給をしようと、ソーラーパネルの設置を試みました。しかし、村長の許可が得られず、その計画は途中で断念してしまいました。(寄稿・網倉 正人)
西アフリカの観光地として有名だったマリ共和国でしたが、2013年以降、イスラム国(IS)やイスラム過激派の影響で、観光客が減り、経済的にかなりのダメージを受けていました。歴史が証明しているように、どの時代でも、どの国でも、そのダメージを受けるのは、末端にいる人々だと思います。
日本に戻ってきた弟に、マリックから連絡が来たのは2014年の年末のことでした。
We need your help,because it’s difficult to live in sirakorodounfin.「私達は助けが必要だ。何故ならばズラコロドゥンフィンで生きることが難しいから」
「アフリカやマリは希望に溢れている」「Life is dream」と、いつでも前向きだったマリックが僕らに助けを求めてきたのは、初めてのことでした。
事態の深刻さを感じ、今度は私がマリへの渡航を決意しました。2015年の6~9月までの3カ月間、電気・ガス・水道無しの人口約3000人のズラコロドゥンフィンという村に滞在しました。実際に現地の人と同じ生活をして、私は水の重要性を実感し、井戸を掘ることを決めました。
第一の壁は、土地探しでした。マリックと一緒に村を隅から隅まで歩き、村のアクセス面、そしてよりフラットである土地を考慮して設置場所を探しました。約30箇所の土地を訪ねましたが、「なぜ、現金を持っていないのに土地を探しているのだ。お前たちに紹介する土地はない」と言われ、ほとんど門前払い。日本帰国の一週間前にようやく希望通りの土地を見つけることができました。
次に取り組んだのは仲間集めです。現地にいるときに、マリでも日本でも、一人ではできることに限界があると感じた私は、小学校からの友人に連絡をとりました。私の声かけに応じてくれたのは各分野で活躍している友人たちでした。フリーのカメラマン、地元山梨の新聞会社でデザインを担当しているもの、自営業の機械設備を営んでいる友人の3人です。
次に、資金調達面では、まず現地の建設会社に井戸の設立にかかる費用の見積もりをとりました。費用は、日本円にして約100万円でした。村に現存する井戸も3基ほどあるのですが、20~30mと比較的浅い井戸であるため、水の安全面を考慮して、私達はより深い井戸(70~100m)を掘る予定です。
100万円という金額を友人から集めて拠出する案もありましたが、より多くの人を巻き込んでいくこと、そして井戸建設で終わらないマリとの関係を築くことを目標にした私たちは、今回クラウドファンディングという手段を取ることに決めました。
帰国後、Readyforを通して、寄付を募り始めたのが今年1月のことです。4月6日現在で76万7000円の寄付をいただいております。金銭面だけでなく、今回のプロジェクトを外に広報していくにつれ、私たちに共感してくれた地元山梨の企業様が、日本製のポンプを寄付してくれたり、地元新聞が活動内容を取材してくれたり、つながりのできたNPO様などからアドバイスをいただいたりと、次第に多くの人の耳へと心へと届いている気がしています。
「過去」の国際協力の形として、モノやカネを与えるだけの支援があります。緊急的な援助ではそのようなことも必要であることは十分に承知していますが、昨年のマリのズラコロドゥンフィンに滞在しているときに一番感じたのは、現地の人々との対話です。
単に「アフリカ」、「マリ共和国」、「村」という枠で彼らをくくり、持つものが持たざるものへの「支援」では、限界があると痛感しています。村にもさまざまな人々がいます。それは東京でも、山梨でも同じことです。
井戸建設は第一歩で、今後は村の人たちと一緒に運営・管理していきます。そして、次に何が必要なのかを一緒に考えていく場を定期的に設けていくことなどを考えています。私たちの案では、村からのバスを運行させることや、ストリートチルドレン用の宿舎兼職業施設の設立などがありますが、村からの声を聞きながら進めていきたいと思っています。
長期的な挑戦で、酸いも甘いも経験することになるかと思いますが、「Life is dream」とマリックだけでなく、村の子どもたちが口癖のように明るい言葉を発していく村づくりに少しでも力添えできたらと思います。
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