新潟県十日町市の中山間部、池谷(いけたに)集落は、わずか数世帯10数人の住民が住んでいるだけで、過疎化が進んでいた。新潟中越大地震の際のボランティア達との出会いをきっかけに、ここの住民たちは外部の人たちとの交流こそが集落の存続の決め手である事を確信。外部の人たちとの交流を持ち過疎の流れを食い止めたことで全国にその存在を知られるようになった。

その流れの中に、昨年、就職が決まっていたにも関わらず大学卒業と同時に、この土地に就農した坂下可奈子というエシカノに会いに行った。(聞き手・写真撮影・オルタナS特派員=伊藤きっこう)



——人生の一大事「就職」がなぜいきなりの就農だったのですか。

坂下:在学中は国際貢献活動の一環でルアンダやケニアを訪れ、自分なりに世界に目を向けていましたが、それとは別に毎年ボランティアでここ(池谷)に通っていました。

ここのおじいちゃん、おばあちゃんたちと過ごすうち、自分の住む所はここにあるのではないかと、4年生の8月に決心したのです。惚れてしまったのかな、ここに。私は決めたら早いのです。去年の2月には移住しました。

(伊藤註:現在、彼女は池谷地区の分校の管理人として住み、集落の人たちに支えられ農業に従事している)

——どんなところが自分とフィットしたのでしょうか。

坂下:人々が繋がっていますよね、ここでは。弱みを見せても平気だし、普通の事がとても心地よいのです。その良さは東京暮らしの時には頭でっかちだったのかな、中々自分で認められなかった心地よさですね。

ともかく口ではなく、体を動かす事が全てだと言うシンプルさ、ですかね。私を可愛がってくれているおじいちゃんからこの前「ちゃんといいものを作ることと、食べてもらうことにしっかり集中するんだよ」と言われたけど、それが全てです。

彼女の師匠の畑に農業体験ツアー参加者を引率

 

池谷分校を橋場さんの畑から望む


 

彼女のナス畑で農業体験ツアー参加者女子組と。


——惚れると言えば、そのパートナーを見つけるのもここでは大変でしょう?坂下さんの恋愛観ってどんなんですか。

坂下:ここに一緒に住んで一緒に家庭を作ってくれる人。町に出て働いても良いですけど、できれば一緒に農業をしたいな。性格は理屈っぽくなくて、足元をしっかり見据えていて、一歩一歩着実に歩むような人がいいです。

ルックスは芸能人で言えばサマーズの三村みたいなパパっぽい人で、無邪気な笑顔の似あう人。約束を守る人で体形は筋肉質。亭主関白でも良いです。尽くしたいタイプなのですよ、ホントは。だからできるだけ早く結婚したいです。

「ここに来たって事はきっと運命的な出会いがここに待ってるって事だよ」と、ある地元の人にも言われたので期待して待つことにします。


——池谷では今は何を収穫してるんですか。

坂下:ナス、トマト、カボチャ、ジャガイモですね。夏やさい便が好評だったので、これからは秋やさい便セットです。
10月下旬はサツマイモの収穫、箱詰め、出荷作業。ここのサツマイモは砂地のおかげで評判が良いのですよ。それと魚沼産コシヒカリを池谷の棚田で作った「山清水米」の刈り入れは9月下旬ですが予約は始まっています。他にも手伝ってもらいたい事は山ほどあるのでぜひ私に会いに池谷に来て下さい。


坂下可奈子:1987年5月22日生/香川県高松市出身/立教大学 法学部卒/facebook/NPO法人十日町市地域おこし実行委員会/池谷情報サイト(脱穀体験「田んぼへ行こう」は10月12日~14日)