関西を中心に音楽活動を行うシンガーソングライターのたつをさんは、東日本大震災で被災された方々のメッセージをライブで伝えている。ライブでは歌はもちろん、被災地で実際に見たことや感じたことを話す。そんな彼のもつ、もうひとつの顔が看護師だ。
2012年3月11日。彼はライブを行うため、岩手県大槌町を訪れていた。震災直後、国際医療救援団体「AMDA」のスタッフとして、大槌町の避難所で支援活動に携わった。
1年後の3月11日にライブを行うことを決めたのは、ほかでもないたつをさん自身だったが、その前日まで、この日にライブをしていいのかという葛藤があったという。
そんな中、迎えたライブ本番。集まった人たちの表情やようすを見て、来てよかったと心から感じることができた。「終わってみたら、するかしないかで悩んでいたことがばからしく思えた」とたつをさんは語る。
そもそも彼が支援活動を始めたのは、偶然目にした被災者の「今ほしいもの」というアンケートの答えがきっかけだった。水やお金に次いで、求められていたものが「音楽」だった。
「当然、医療も求められるはず。自分がいくしかない」彼はそう感じたという。支援活動はもちろんのこと、持ってきたギターで歌を歌い、被災者を励まし続けた。活動を続けていくにつれて、被災者を励ますつもりが、自分もまた励まされていることに気付いた。
今年の9月には、彼は米国・ミルウォーキーにて行われた東北復興支援イベント「JAPAN FEST 2012」に参加、ライブを行った。これは、AMDAのスタッフとして活動していたときのリーダーとの縁をきっかけに広がったという。
「いろんな人に支えられていることを毎日実感している。音楽は国境を超えるはずだし、世代も関係ない。思いを届けるのはもちろん、これからもたくさんのものを吸収していきたい」とたつをさんは語った。(オルタナS関西支局長=橋本翔一朗)
「津波に負けなかったギター」DVD販売サイト *たつをさんが被災地でライブを行なった様子は1枚の自主制作DVDにまとめられている。
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