「フィリピン」と聞くと、何を思い浮かべるだろうか。語学留学もあればセブ島もあり訪れる日本人は非常に多い。しかしながら、いまだにスラムで生活する子どもも多くいるが残っているのだ。そのような状況の中で、学校で学べない子ども達に音楽で何かしたいとフィリピンのセブで活動している日本人がいる。


現在クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」で資金調達中のプロジェクトに「スラムの音楽教室inフィリピン-学校で学べない子ども達にオーケストラで教育を!」というものがある。今回このプロジェクトについて、実施者のNPO法人セブンスピリットの野口彰英さんにお話を伺うことができたので、その思いとともにプロジェクトの紹介をしたいと思う。

まだ発展途上国であるフィリピンでは、未だに多くの子ども達が学校に通うことができずにいる。スラムの中で子どもたちは、タバコ、酒、薬物、暴力、犯罪などの危険にさらされながら生活している。

野口さんらは、音楽教育のNPOセブンスピリットを設立し、国内外場所を問わず活動している。その1つの活動としてフィリピンでは、このように「学び」と「遊び」に没頭することができない貧困層の子どもたちに、音楽を通じて好きなことを見つけ、努力する機会を与えようとしているのだ。


では、なぜ音楽なのか?

野口さんは「元々音楽一家で生まれ、2歳でピアノをはじめ、高校でも吹奏楽をやっていた。その後、大学1年生の時に、当時では珍しいセブに語学留学し、日本人の方が運営するNGOに関わる機会があった。そして帰国後は、国際協力団体を立ち上げ、日本の学校にある楽器をゆずってもらい、フィリピンの個人や組織に寄付する活動を行っていた。しかし、根本として、現地の人が音楽を教えることができなければ本末転倒だと思い、NGOで研修生として現地の指導者養成などをしていた」と、これまでの自身の人生を振り返る。

実は、同じ問題を抱える南米ベネズエラでは、30年以上前に成功したケースがあることを知っている方はいるだろうか。そのケースとは、無料放課後オーケストラ教室「エル・システマ」として知られる教育政策だ。無料で楽器を与えられた延べ30万人以上の子どもたちがオーケストラの練習に没頭し、スラム生活を経て、健全に成長していったという。

野口さんらの活動スローガンは「We Can Play It.」。この”Play”には以下の3つの想いが込められているとのことだ。

1. 子どもが子どもらしく遊べる社会に(=TO PLAY PHYSICALLY)
2. 全ての子ども達が音楽活動に参加できる社会に(=TO PLAY MUSIC/ENSEMBLE)
3. 子ども達一人ひとりが、それぞれの役割を果たせる社会に(=TO PLAY ROLES)


つまり、音楽活動を通して、このPLAYの輪を広げていく事がプロジェクトのミッションとなっている。現在では、30~40人ものストリートチルドレン達が合唱練習をすることができている。

その合唱練習に関しては、今のままでも十分なのだが、オーケストラの練習となると、放課後に気兼ねなく思いっきり音を出して練習ができる場所・環境・スタジオの防音改築費が必要になる。いままでは、ダウンタウンにある壁も半分ないような体育館でなんとか活動してきたが、治安や環境的な問題もあることから資金調達中というわけなのだ。

野口さんは最後に、「国際協力と言うと、何かをあげたりとか、寄付するという発想が多い。しかし、現地に根ざした活動を考えた時に、エルシステマを聴いたことは、衝撃的だった。音楽を通じて子どもの未来を創っていくし、皆さんの好きな音楽を使って、国際協力ができることを心から知ってほしい。ぜひ協力していただきたい。すぐに結果が出るとは限らないけど、いつか皆さんの前でも演奏できるように大きなプロジェクトになっていけばと思う」と、プロジェクトにかける思いを語ってくれた。

このプロジェクトが成功し、無事スタジオの改築が終わり、楽器の調達なども進む来年以降、実際にオーケストラプログラムを開始予定とのこと。残り10日で、目標金額60万円のところ、現在55万円ほどの支援が集まっている。あと少しで達成するこのプロジェクト、共感された方は支援を通じてプロジェクトの一員となってみるのはいかがだろうか。(オルタナS編集部員=佐藤慶一)


[スラムの音楽教室inフィリピン-学校で学べない子ども達にオーケストラで教育を! ー CAMPFIRE] [NPO法人セブンスピリット]