タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう
なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)
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◆特技を生かせ
「絆創膏みたいな奴だ。もっともこの絆創膏って名前もトレードマークだけどね」
「トレードマークってなんです?」
「知らなければ知らないでいい。しかしフットボールをするときはいつでも絆創膏のような粘着テープを少なくても足首に巻くんだ。テープを巻くからテーピングって言うんだ」
「テーピング。アメリカの学生はみなそんなことしているんですか?」
「全員だ。テーピングしなければゲームもプラクティスだってできないんだよ」
「君たちは練習が暇だから、日本で初めてテーピングができるトレーナ-になったら?人間工学の研究にぴったりだと思うけどな。これから日本でも全てのスポーツの必須になるから卒業するころは引っ張りだこだよ」
「へー、それコーチが教えてくれるんですか?」
「教えるよ。春はぶつかり稽古はしないから、春の内におぼえて、秋のシーズンに巻けるようになってよ」
「分かりました。面白そうです」中島が言った。
「でもオレ」木村が悔しそうに言った。
「そうか木村君は腕に問題があったな。それでは木村君にはアシスタントコーチもやってもらおう」
「オレフットボールも知らないのにコーチですか?」
「そうだ、トレーナーにコーチだ。君たちのファーストネームはなんていうの?」
「健吾です」木村が言った。
「じゃあケンと呼ぶ。試合は忙しいからね」
「勉です」
「じゃあトムだ」吉田は言った。「今日はもういいから、もっともっといろいろな特技を持っている奴、連れて来てよ」
吉田は続いて4人のデブを呼んだ。四人はちょうど一塊になって暇そうにしていたが、体を揺すってどたどたと走ってきた。
「どう、走るの苦手だよね?」
「ダメです。走ってばかりいるんならおれできません」100キロは十分ある一人が言った。
「スポーツなんかやったことある?」
「相撲を少し。でもきついから続かなかったです」
吉田は言った。「フットボールはね。相撲より動いている時間は短いんだ」
「でも試合は長いんでしょう?」
「試合は長いよ2時間以上だ。だけと立ち合いを4回やるだけだ。押し勝ったら。もう四回、
また勝ったらまた四回。多分それで休めるんじゃないかな?何しろ攻撃の選手と守備の選手は別々だからね。君はおそらく攻撃をやってもらうからあまり走らなくていいんだ。」
「じゃあ出来るかもしれません」
「名前なんて言うの?」
「斉藤です。斉藤茂雄です」
「ではシゲだ。シゲはライトガード」
「ガードってなんですか?」シゲが言った。「ガードって守るのでなかと?なんで攻めるとですか?」
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