前編の続き

——若者に限らずコンプレックスは多くの人が抱えています。理想の自分と現実の自分の狭間に悩み、受け入れられないことに悩みます。垣内さんはどのように受け入れましたか?

垣内:今でもコンプレックスは感じています。背が低い、身体の形が変わっている、車椅子に乗っていることなどです。「コンプレックスが強みだ」と言ってはいますが、やはり今でも根強いコンプレックスとして抱えています。

コンプレックスから解放されるとしたら、決意と慣れが必要なのではないかと思います。

慣れは、高校のときにお付き合いしていた彼女が教えてくれました。そのときは車椅子が嫌で、外に出ていくことに抵抗がありました。でも、彼女がよく外に連れ出してくれたのです。

ある時、「手をつないで歩きたい」と言われました。車椅子の場合、平坦な道なら片手でもこげますが、坂道や段差がある場合は、両手を使わないと進むことができません。結果的に、彼女に引っ張ってもらうことになってしまうので、それが嫌でした。

断ろうと思っていましたが、彼女は「だから手をつないでいるんじゃない」と言ってくれました。そのときに、受け入れてくれたと実感しました。それからは、抵抗感なく外にも出られるようになりました。さらに、それまでは誰かに手伝ってもらうことにも慣れていませんでしたが、そのことにも抵抗を感じなくなりました。

決意なのですが、コンプレックスと向き合う決意をするかどうかです。コンプレックスは無理に克服しなくてもいいと思います。一緒に上手く歩いていく決意をすればよいだけです。

必ず、受け止めてくれる人もいると信じることが大切になってきます。18歳のときに、彼女との間に子どもができたかもしれない時がありました。彼女には、子どもに遺伝することを伝えていなかったので、どうやって伝えようか3日3晩寝られない日々が続きました。

彼女に打ち明けたときに、こう返されました。「だから何?私たちの子どもだったらそれでいいじゃない」と。そう言われたときに、2時間くらいわんわんと泣いていました。

今まで、車椅子が周りの人との壁になって、多くのマイナスがありましたが、強烈なプラスもあるのだと感じました。そのときに、人を信じることが大切だとわかりました。人を一人でも信じられるようになると、たくさんの人を信じられるようになりました。

垣内さんの携帯には、生まれてからの日数や45歳までの日数が登録されている


何かを変えたいと思うのであれば努力は必要です、でも、どうにもならないこともあります。私の場合は歩こうと思っても、歩けませんでした。

でも、全力で挑戦してみてだめだったからこそ、今の生き方を見つけました。あのとき、挑戦していなかったら、きっと今でも、ウジウジしていたかもしれません。

よく講演などで、障がいはあった方がよいか?なかった方がよいか?という質問をされることがあります。なかった方がいいに決まっています。

ですが、障がいがあろうと、なかろうと生きていたら、辛いことも楽しいこともたくさんあります。最期の最期で、楽しいことと悲しいことが51対49になればいいですね。ちょっとだけでも、楽しかったと思えることが多ければ、良い人生の幕を閉じられると思っています。

今は、歩けなかったから出会えた良い事柄を一つずつ増やしています。このことを障がいがある多くの人にも増やせるのが使命だと感じています。

人は決意次第で変わっていけます。ゆっくりと急がず焦らず付き合って、向き合うことが大切です。




ミライロ


【障がい】関連の他の記事を読む
日本一の夢は難病抱える23歳 「日本をUD先進国へ」 夢AWARD3
クリックすると1円が障がい者スポーツチームへ スポクリ
【寄稿】カラフルラブ代表笠井成樹 「遊びで社会を変えたい」


・企業のCSRに興味がある方はこちら
・NPO/NGO活動に興味がある方はこちら
・若者の社会貢献活動に興味がある方はこちら
・ソーシャルグッドなアイデア・サービスに興味がある方はこちら






前の記事を読む読む⇒【大量生産・大量消費に違和感、エチオピアでものづくりを見直す「andu amet」代表 鮫島弘子