中山間地域に移住してきた女子たち、通称「移住女子」による、地方の魅力を伝えるフリーペーパー制作企画が始動している。現在、制作費をクラウドファンディングサイト「FAAVO(ファーボ)新潟」で集めている。支援者には、制作したフリーペーパー以外に、移住女子が作った野菜や農産物が届く。(オルタナS副編集長=池田真隆)
製作するフリーペーパーは、「ChuClu(ちゅくる)」というタイトルで、新潟県十日町市の中山間地域の暮らしや食、人を紹介する予定だ。地域で起きた後世に残したい小話や中山間地域で暮らしている人たちのリアルトーク、移住女子たちの奮闘日記などで構成される。
同企画の代表は新潟県十日町市で農業活動を行う坂下可奈子さん。2011年に立教大学を卒業し、人口わずか20人弱の十日町市池谷集落に移住した。坂下さんは企画した背景を、「ここで暮らしている人たちの強い心と広い人間性を伝えたい」と話す。
「冬には4m近くも雪が降る豪雪地帯だからこそ和と協調が大事にされ、池谷集落が一つの家族のような地域として機能します。みんなで生活を支え合うおじいちゃんおばあちゃんたちの、大きなお世話を焼いて焼かれる姿には、暮らしの中にいつも自分以外の何かが寄り添っていること感じさせてくれ、目に見えない何かにいつも大切に守られていることを教えてくれます」
人は一人では生きていけない、支えあって生きていることを伝えたいという。人が流出してゆく中山間地の現場で働くことは、いわば時代に逆行しており挑戦の日々でもある。しかし、今の時代に、現場にいるからこそ伝えられるものがあるのではないか。
坂下さんは、「そこにある大切なものを守りたい、次世代に集落をつなげたいという池谷集落のおじいちゃんおばあちゃんの想いにも答えたいという気持ちがある」と意気込む。
坂下さんは地域のどこに惚れたのか。それは、目には見えないが、地域を支えているものだという。「地域の良さは食べ物や自然、人など、目に見えるものも沢山ありますが、地域を支えているのは目に見えないもののように思います。しかしそれを読み取るには、現代はあまりにも忙しすぎて、スピードが早く、情報が多く、変化が早いです」と話す。
「山奥で一人で農業をしている腰の曲がったおじいちゃんも、哲学者です。派手なことをしたり、大きな事業をしているわけではないですが、物語に溢れています。小さな価値観の変化が足を止め、人を繋げ、後世に続くやさしい地域をつくっていくと思います」
移住女子がつくるフリーペーパー「ちゅくる」は、7月31日まで支援者を募集している。(オルタナS副編集長=池田真隆)