「おのくんのおかげで色々な人が会いにきてくれた」と話すのは、小野駅前郷応急仮設住宅に住む武田文子さん。現在、この仮設住宅に住む60代女性15人ほどがおのくんの作り手たちで、武田さんは代表を務める。

おのくん効果で、一カ月に100人以上仮設住宅を訪ねる。武田さんは、県外から人が来ることで、「精神状態も良くなった」と話す。「みんなが仮説住宅で暮らし始めたばかりの頃は、入居者同士で被災したつらさを話しても、深刻さの比べあいになってしまい、つらさがやわらぐどころか、暗くなっていった。けど、おのくんのおかげで、県外から人が来るようになり、笑顔が増えた」。

県外の人と話すことで、ある変化が起きた。それは、涙を流せるようになったことだ。「今までは、気持ちを張り詰めていたこともあり、被災した話をしても、涙が出なかった。でも、今は違う。ちゃんと涙を流しながら、当時を語れるようになった。精神状態が安定してきた証拠だと思う」と武田さん。

おのくんを作ることになったきっかけは、「誰かと話したい」という気持ちからだ。「仮設住宅に一匹のソックスモンキーが送られきた。これを見たことで、私たちで作ってみようかと思った。初めから商売目的で作ってはいない。単純に、誰かと話したくて、ここに来てくれる人を募るために作った。正直、ここまで売れるとは考えてもいなかった。一回で飽きるだろうとさえ思っていた(笑)」(武田さん)

しかし、武田さんの読みは上手く外れ、爆発的ヒット商品となった。靴下の大きさや色によって、一つひとつが異なり、そのかわいさに癒される。購入者はおのくんを写真に撮り、フェイスブック上で投稿することで、さらに認知度が広まった。

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