ソーシャルメディアでは人とのつながりを求めるのに、近所づきあいは苦手とする原因はなぜだろうか。地縁を生かした防災啓発活動を行う任意団体「Community Crossing Japan(コミュニティークロッシングジャパン)の共同代表を務める吉高美帆さんに聞いた。(オルタナS副編集長=池田真隆)

宮城県南三陸町で、震災の避難時について住民からヒアリングする吉高さん(写真左から2番目)

吉高さんは、コミュニティーを大きく4つに分けて考えている。「血縁」「地縁」「学縁(学校や企業)」「趣味縁」だ。近年希薄化しているのは、「地縁」であり、SNSの発達で「趣味縁」が拡大していると分析する。

地縁関係が薄くなると、災害が起きた際に、多くの被害が出る。この問題を解決するために、コミュニティークロッシングジャパンでは、共助の地縁をつくることを目指した防災啓発を行う。

今年1月から毎月1回、六本木ヒルズで防災勉強会を開催してきた。2012年9月には、総勢80人で福島県を訪れ、福島第一原発事故の被害を受けた現場で防災を学んだ。

防災には、自助・共助・公助の3つがあるが、特に東京では共助の点が弱いと吉高さんは見る。「東日本大震災時、避難所に共助の精神がないことで、二次被害が出た。数年後に予測されている首都直下型地震では、甚大な被害が出るかもしれない」。

東日本大震災の震災関連死は、2700人弱であり、過半数が避難所での不衛生な生活が原因とされる。「靴を履いたまま避難所で生活したことで子どもが喘息になったり、女性の着替え場所が用意されていなかったり、身体的にも精神的にもストレスがたまってしまう」と吉高さんは話す。

そこで、同団体は、防災・研修事業を開発した。対象は、都市部で震災があった場合に、避難所となることが想定される商業施設やホテル、駅などを利用する社会人だ。

災害時、避難者からのクレームや避難所でのトラブルの対応方法を学ぶ。座学を学ぶ研修に加えて、宮城県南三陸町へのスタディツアーも行う。被災した人の話から、避難所で必要なことを探る。

吉高さんは、「自助だけでは助け合えない。誰かが助けてくれるという精神ではなく、一人ひとりが共助の意識を持たなくてはいけない。災害大国日本では、誰もが、被災者になる可能性があるのだから」と訴える。

福島県相馬市出身の吉高さんは、自然に囲まれて育った。大学でも自然環境を専攻し、現在は、フリーで環境イベントの講師やファシリテーターを務める。

環境省の「今後の環境教育・普及啓発の在り方を考える検討チーム」に環境教育の有識者として選任され、企業における教育、地域教育、幼児教育、学校教育などさまざまな角度からの検討に参画している。

「地縁を強く意識し、共助の精神を持つと、誰かのことを考えた生き方になる。すると、環境のことも考えるようになる」と話す。

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