福沢ビデオプランニング(大阪市東成区)は企業のプロモーション映像の制作とそれを活用したマーケティング戦略の提案を行う。家電専門店として1955年に創業し、顧客サービスとして始めた撮影業務が本格化。現在は企業のブランディングや商品PR、人材募集の映像まで裾野を広げている。2013年を第三の創業期と位置づけ、日本一のCS(お客様満足度)とES(従業員満足度)を目指している。「良い会社とは社員が自分の成長を実感できる会社です」と語るの福澤伸雄社長(50)に映像づくりへの思いと今後の展望について聞いた。(聞き手・オルタナS関西支局特派員=板谷祥奈)

「100歳まで青春していたい」と話す50歳を迎えた福澤伸雄社長=大阪市東成区(撮影・木田優介)

――映像事業を始めたきっかけは。

福澤:もともとは父が電気屋を経営していて、映像機器の販売促進のためのサービスとして結婚式の撮影を始めたのがきっかけです。これが評判を呼び、地域やPTAの行事、ゴルフのコンペなどの撮影を依頼されるようになりました。次第に撮影だけでなく編集も行い、お金をもらって仕事を引き受けるようになりました。映像の制作が家電販売の業績を上回った1989年に現在の社名に変更し法人化しました。

――現在、力を入れている事業は。

福澤:動画や映像の制作にとどまらず、アウトプットの方法を含めたマーケティング戦略を中小企業の皆様に提案しています。今は若者のテレビ離れが進む一方、インターネットの普及で誰もが簡単に自分で動画を作ってアップロードできる時代になりました。

YouTubeなどのプラットホームを活用すれば、お金をかけずに世界中の人々に見てもらえます。当社には家電販売で培った経験と動画マーケティングのノウハウがあります。動画なんて作る気はないと思っている中小企業の皆様にも積極的に魅力を伝えて販売活動を応援できたらと思います。

――具体的にマーケティング戦略とは。

福澤:ユーチューバーという人たちがいるのを知っていますか。会社の商品を使ってみた感想や新しい使い方などを紹介する動画をYouTube に投稿する人のことです。動画はネットの口コミで広がり、テレビCMよりもPR効果が高いこともあります。

人気のあるユーチューバーは見た人の購買意欲をかき立てる工夫をしています。当社も、30秒程度の動画をたくさんつくって投稿すると、多くの人に見てもらいやすいなど、さまざまな戦略を研究しています。

――仕事をするうえでのこだわりは。

福澤:CS日本一を目指していますが、お客様にご満足のさらに先にある感動まで与えられる仕事をしたい。感動こそ、次の依頼につながるという考えからです。映像づくりは見た人に行動を起こしてもらうことが目的です。

映像を見てもらうターゲットを意識して作る姿勢を貫くと、お客様の要望とぶつかることもあります。しかし最後には完成した映像はもちろん、プロモーションの成果にも感動してもらえます。

例えば、採用説明会で流す映像は、会社の雰囲気や風土を動きや音楽を駆使して伝えると、たくさんの応募者が集まり、お客様に喜んでもらえることが多い。一つずつ企画から丁寧に作り上げるオーダーメードだからこそできることだと思います。社員それぞれが感動を与えて信頼関係を築くことでリピーターを増やしていきたい。

「社員が豊かでない会社の経営者は半人前です」と話す福澤伸雄社長=大阪市東成区(撮影・木田優介)

――ESを向上させるためにどのような取り組みをしていますか。

福澤:動画・映像づくりを通じて自身の日々の成長を実感できることが社員のやりがいにつながると思っています。社員がビジョンを持ち、会社や自分が豊かになるイメージができれば、わくわくして新しいことにも挑戦していけるはず。

まず社長である自分が明確なビジョンを描き、常に発信し続けることで社員のモチベーションを高めたい。「幸せ」とは、幸せに向けて進んでいることが実感できる状態のことだと思います。

富士山を登るにつれて景色が変わっていくのと同じで、考え方も事業が拡大するにつれて変わっていくものです。どんどん理想も広がるのでゴールすることよりも社員とともに豊かになっていく道のりを大切にしたいです。

――経営者として心がけていることは。

福澤:強いリーダーシップを心がけています。ある人からリーダーシップとは目の前の問題を解決する能力のことであり、怠けようとする自分と戦う能力のことだと教わりました。

リーダーシップは自分に対しても持つべきで、組織の長だけでなく全ての人に必要だと思います。どんな環境でも前に進めるリーダーシップをもった人でありたい。こんなことを言うと驚くかもしれませんが、組織全体としては仮面ライダーに出てくる「ショッカー」のような団結力のある「悪の組織」を目指しています。

仮面ライダーは敵が攻めてきてから防戦する受け身の姿勢で、自分から良い世界を作ろうとはしていません。対してショッカーはリーダーの夢のもとに団結し、負けても決してめげずに挑み続けます。私が言う悪の組織には、自分の会社もショッカーのような、打たれ強い組織であればすばらしいという思いが込められています。

――今後の展望は。

福澤:5年後に純資産5000万円、10年後に1000人のグループ企業を作ることを目指しています。社員が増えれば、社会の役に立つための手段も増えていくはず。社員4人という今の規模からは到底考えられない目標ですが、目指して進もうとする意志がなければ絶対に実現できないと思います。

周りに向かって発信していれば、強い意志で頑張ろうとしていることが伝わり、協力者が増えて盛り立ててくれるかもしれません。自分は運が悪いと言っている人よりも、運が良いと言っている人に近づきたいと思うのは当然のことです。心の在り方次第で良い流れができます。ピンチはチャンスと捉え、今後も目の前に現れる問題の解決に前向きに取り組んでいきたい。