時間や場所にしばられない、自分らしい働き方ができる場所として、ここ数年増え続けているコワーキングスペース。そんな場を運営しながら、自ら家族と仕事のバランスのとれた働き方を実践する夫婦がいる。デザイナーの深沢幸治郎さん(34)と、イラストレーターの深沢周代さん(28)が運営する「JUSO Coworking」では、そんな2人に引き寄せられるように、デザイナーなどのクリエイター、手芸などを仕事とする女性たちが集まり、アットホームなコミュニティが生まれている。(オルタナS関西支局長=神崎英徳)

家族と仕事のバランスのとれた働き方を実践する深沢夫婦(JUSO Coworking提供)

コワーキングとは、フリーランスなど独立して働く人たちが、オフィス環境を共有し、アイデアや情報を交換しながら相乗効果を生み出そうとする働き方のことで、都市部を中心に急速に広がっている。

「JUSO Coworking」が生まれたのは、コワーキングブームが始まる前の2010年12月。周代さんの実家が持つビルがテナント不況の影響で経営が厳しく、そのビルを残したいという気持ちから家業を継ぎ、自分の給料を稼ぐために、時間貸しでレンタルスペースを始めたことがきっかけだ。その半年後に結婚し、その後幸治郎さんも独立。子どももでき、場所もあるので、家族を中心にした働き方ができる場所として、コワーキングスペースの運営を始めた。

通常のコワーキングスペースは、場所を選ばずに働くことができる、フリーのデザイナーやプログラマばかりが集まることが多いが、「JUSO Coworking」では、手芸やフラワーアレンジメントなどを仕事とする女性の割合が約3割と高いことが特長だ。現在月に約80人の利用者がおり、違う考えの人たちが集まることで気分転換や新しい発想が生まれ、様々なライフスタイルのイメージが膨らむという。

アットホームな雰囲気のコワーキングスペース(JUSO Coworking提供)

女性が多いのは、キッズスペースや保育所提携など働く女性を支援する仕組みがあることも理由の一つだが、運営者に子育て中の女性がおり、結婚や子育てについて気軽に相談できることが大きいのではないかと周代さんは語る。「私の役割はにぎやかし。旦那だけだと混ざらない空気を混ぜ、空気を変えること」

「JUSO Coworking」が目指していることは、家族や子どもなど、自分の生き方を考えるきっかけになること。「私自身、若い頃から、将来何をしたらいいのかわからず悩んでいました。仕事や結婚、育児や介護など生き方を左右する出来事はいろいろとあります。でも結婚や出産と、仕事のやりがいを感じる期間が重なっているので、なかなかそのことを考える機会がありません。そんなことも集まったメンバーみんなで話ができる場所にしたいと思っています」。

「JUSO Coworking」:http://juso-coworking.com/

======================================
オルタナS関西支局では、クリエイティブネットワークセンター大阪「メビック扇町」と連携し、「これまでの常識とは違う働き方をしている」「新しい課題や分野にチャレンジしている」「社会課題の解決に取り組む」魅力的なクリエイターを取材し、記事を連載しています。多様なクリエイターの生き方を通して、オルタナS読者が将来を考える際のヒントにしていただければ幸いです。