「LINEで既読したらすぐにスタンプを押す」「チャットで事業の意思確認を行う」――ボランタリーで集まったメンバーを動かすコツの一例だ。学生と若手社会人合わせて20人の復興支援NPOに、メンバーのモチベーションを上げる方法を聞いた。キーは、「リスペクト」をどのように形にするかだ。(オルタナS副編集長=池田真隆)

SETの会議風景

NPO法人SETは岩手県陸前高田市広田町を支援する団体だ。東京と広田町に拠点を置く。東京の若者を東北に呼び込み、宿泊しながら、町の課題解決を考える研修などを企画している。

メンバーの平均年齢は20代前半。東京に18人、広田町に2人いる。社会人と学生が半分ずつおり、年に3回行う総会以外は全員で集まらず、基本的に4~5人ほどのチームで活動している。チームは、広報、企画、経理など4つに分けている。

同団体は、東日本大震災をきっかけに、立ち上がった。立ち上げたメンバーたちは大学生時代からの付き合いなので、社会人になった今も団体への帰属意識は高い。しかし、入社間もない彼らは、業務に追われ思うように関わることができずにいたこともあるという。

そこで、彼らは考えた。特徴的なのは、「TKM」だ。TKMとは、「時をかける会議」の略称で、チャットで事業の意思確認を行うものだ。事前にTKMの日を決めておき、その日の朝にはフェイスブックのグループチャットで意思確認を求める内容を投稿する。業務や学業の間で、メンバーたちはそれぞれ意見を返す。

その日の1時間は、メンバー全員がコメントに集中する「フィーバータイム」を設けることも盛り上がる秘けつだ。グループチャットの人数は3~4人がオススメだという。環境が変わり時間が取りづらくなった今でも、この手法でカバーしている。

同団体は外部団体との協働も模索している。その際は、飲みながらのコミュニケーションも重要だという。同団体の三井俊介理事長(25)は、「まずは相手の話を聞く。その人の価値観ややりたいことを把握し、その人に合うプロジェクトの話が来たときはすぐに振れるようにしている」と話す

SETのメンバー

メンバーの「あなたらしさ」を体現するため、工夫もした。人材の育成をするコーチングの基本モデルである「GROWモデル」に「V2」を加えた。V2とは、「バリュー」と「ビジョン」だ。

目標に向かって取る行動が、個々のメンバーの価値観やビジョンと合っているのかを大切にする。単純に、目標に向かって効率的な手法を選択するのではなく、「V2」に沿った手法を選び、それを効率的に行うのだ。

GROWモデル。これにV2を加えた

三井理事長は、「前提として、リスペクトの気持ちは常に持つ。メンバーで立場や年齢、コミット具合は異なるが、上も下もない」と言う。仕事が忙しくて、コミットが低くても、相手を信じて重いタスクを頼むこともある。

「久しぶりに会議に来たメンバーも、話してみれば、実は関わりたい気持ちを強くもっていると分かった。だから、その気持ちを信じる。信じることが何よりも大切」