社会起業家支援を行うアショカジャパンでは2012年から、「(東北)ユースベンチャープログラム」を行っている。このプログラムでは社会問題の解決や東北の復興に対して、行動を起こしたいという気概とユニークなアイディアを持つ12歳~20歳の若者を支援している。アショカジャパンにより選出され、活動を続ける若者を特集する本企画。第14弾の今回は京都の中高生に対して震災の講演活動を行なっている下田満さん。(アショカジャパン東北ユースベンチャラー=大前 拓也)
京都府出身の下田さん。「高校生の時に初めて被災地を訪れた時に見たもの、感じたものからこの経験を関西で生かすことはできないかと考え、実際に震災を経験した人と一緒に、京都の中学校・高校で講演会を開こうと決意しました」と、これまで5回の講演活動を行ない、約1200人の方に話してきた。
活動当初、関西に住む学生は東北に足を運ぶ機会が少なかった。下田さんは、同世代は大きな災害も経験したことがないため防災意識が低いのではないかと考え、より災害を身近にしようと動き出した。実際に被災した方をお招きし、体験談を語ってもらった。その場でどんなことが起こったのかを知ってもらうことが狙いだ。
そして昨年の11月に京都市内の中学校で第1回目を実施。500人の生徒を前に話し、当時の体験談を話してもらう中で彼自身の考えの変化があったという。
「3.11に伴った物理的な側面ではなく、精神的側面。被災した方のリアルな感情の変化を感じ取ってほしい」。防災意識の向上を目的に動き出した講演活動。
しかし、彼の中でそれよりも大事にしなければならないと感じたことがある。それは人を大切にする、生きている今を大切にするというとってもシンプルなことだった。「当たり前のことだけど、忘れがちなこと。それを心に訴えかけてくれたのが被災地でした」と改めて感じた下田さん。
「僕は3.11の実際の被災者ではありません。被災した人の痛みとか苦しみとかっていうのは絶対にわかりません。しかし、人間にはエンパシー(共感)という能力があります。たとえば、今この人は何を思っているのか、あの時あの人は何を感じていたのだろう。想像やイメージ・直感に過ぎないのですが、非常に重要なことです。被災者の方の話を聞く中で、みなさんは想像し、自分の身に置き換えて考える。それが大事なことだと思うのです。この活動を通して人として考えるべきことを改めて思い出させてくれる機会になったと思います」と語ってくれた。
今後もこの活動を拡大することを考えており、すでに10月・11月には京都市内の学校での講演が決まった下田さん。この講演では下田さんが1人で登壇することになっており、これまでの経験を生かし、心に訴えかける講演がしたいと語る。彼の講演をより多くの方が耳にする機会が増えることを期待したい。
アショカジャパン:http://japan.ashoka.org/
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