カンボジアで現地の子どもたちと一緒によさこいを踊り、国境を超えたつながりを体感するツアーを毎年企画している日本人がいる。鶴岡明子さんという女性の方だ。
鶴岡さんが初めてカンボジアに訪れたのは2007年の12月。アンコールワットが見たいという観光目的で友達と旅行した。旅行中、偶然よさこいの衣装を持ち合わせていたこともあり、現地のNGO Make The Heven(メイクザヘブン)に頼み、孤児院やスラム街でよさこいを披露した。
子どもたちは見た事がない踊りに釘付けだったという。「今までは自分のために踊っていたが、こんなに喜んでくれる人がいることで私にも力になれることがあると思った」と鶴岡さんは振り返る。
2009年2月から、カンボジアへのツアーを企画する。20人弱でカンボジアの孤児院やスラム街を回って、よさこいを披露した。「踊っていると、子どもたちが飛びついてきた。彼らは恥ずかしがらずに、ストレートに想ったことを表現する」と話す。
第一回ツアーを成功し終えたが、第二回を開催するかは悩んだという。一緒にカンボジアに行った仲間の中には、支援や交流のためではなく、思い出づくりの一つと考えている人もいて、温度差を感じたからである。
しかし、その考えを変える出来事が2009年8月に起きる。NGOメイクザへブンが主催する南アフリカでの植樹ツアーに参加した。そこで出会った南アフリカと日本のハーフでロックバンド活動をする社会人にこういわれた。「アパルトヘイトが残る南アフリカでは、私のことを産んで育てることはできなかった。日本で育てられたが、差別問題に直面して幼少期を過した。この経験から、音楽を通して差別のない世界にしたい」
その出会いを経験した鶴岡さんは心機一転、自分にもできることはあると思いよさこいツアーを企画する。2010年、2011年、2012年と続けて企画して、毎年よさこいを踊った。
ツアーを企画していくうちに、カンボジアに住む子どもたちからも踊りを教えてほしいといわれ、ツアーの前に鶴岡さん一人でカンボジアに渡りよさこいを教えだした。
「踊りを通して何かを伝えたかったが、逆にもらうものが多かった。なので、ただ披露するのではなく、一緒になって踊った方がいいのではないかと思った」と話す。
ツアーに参加した人からは、「一緒によさこいを踊って、みんなが同じ瞬間で笑うのは奇跡のような空間だった。今まで、ラブ&ピースという言葉は理想だと思っていたが、この瞬間こそがラブ&ピースなのだと思った」という声が聞かれたという。
鶴岡さんの元にも、カンボジアでよさこいを教えた子どもたちから感謝の言葉と、また会いたいと書かれた手紙が届くという。踊りを披露して稼いだお金で購入したネックレスや、手編みのミサンガなどが手紙に入っていることもあるという。
踊りで国境や性別、年齢を超えて一つにつなげていきたいと鶴岡さんは志す。「住んでいる環境が違っても、一緒に踊って、同じ瞬間に笑いあえることでつながりを感じる。小さな行動かもしれないが、私は私らしく踊り続けていきたい」と意気込む。(オルタナS副編集長=池田真隆)
・OHANA☆公式サイト
踊りとカンボジアに魅せられたメンバーで結成されたチーム。
“カンボジアに祭りを興せ!!!”を合言葉に、年に一度カンボジアの子どもたちとよさこいを踊るツアーを企画する。