金子隆耶さん(甲南大学マネジメント創造学部4年・21)は、若者の農に対するリテラシーを高める活動をしている。任意団体を立ち上げ、大学生向けの農作業体験ツアーを企画。金子さんは、「農作業をすれば、スーパーに並んでいる食品の生産地や生産方法についても自然と気にするようになるはず」と、価格だけでなく、生産背景も考慮して食材を選んでほしいと訴える。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

同世代の農リテラシーを高めていきたいと語る金子さん

同世代の農リテラシーを高めていきたいと語る金子さん

金子さんは2013年1月、任意団体アグリスタを友人10人ほどで立ち上げた。団体の目的は、若者と農のつながりをつくることだ。同団体では、農作業体験ツアーを企画しているだけでなく、自分たちで畑を借りて生産・販売も行っている。兵庫県南東部の西宮市に約300坪ほどの畑を持ち、メンバーでシフトを組みながら作業をしている。

育てているのは、米と無農薬野菜。加えて、西洋ミツバチの養蜂も行っている。メンバーは、畑仕事の経験が浅いため、地元の農家や養蜂家から教えてもらい、試行錯誤しながら作業にあたる。2013年から作業を始め、初年度は、お米100キロ、蜂蜜50キロ、野菜は、トマト、ナス、オクラ、にんにく、たまねぎ、白菜などが収穫できた。

採れた蜂蜜は、兵庫県丹波の農家とコラボして、「たまねぎドレッシング」として販売しているが、米と野菜は、地元で行われる朝市やマルシェなどに出店し、直売する。しかし、不定期に開催されるイベントでの直売のため、食材の運送費や人件費などが重み、うまく収益が上げられていないという。

計画通りに売り先が見つからず、売れ残りが大量に出てしまったとき、「『作ったものは、全部売る。残ったら、すべて捨てる』くらいの覚悟を持って、とことんやり切らなくてはいけない」と先輩農家から檄を飛ばされたこともある。

来年4月には、兵庫県加西市で「どろんこバレー」ツアーを企画している。大学生を対象にしたツアーで、農地でバレー大会を行い、その後、農作業体験と収穫した食材を味わう。金子さんは、「同世代の農に対するイメージを変えたい。一度でいいので土に触れてみれば、必ず、イメージが変わるはず」と話す。

金子さんが描く社会は、「スーパーで食材を購入するときに、生産背景まで気にするようになること」だ。「価格だけで選んでいると、一番ダメージを受けるのは、農家さん。有機栽培で作られた野菜のメリットについて、農薬を使った野菜の危険性について、もっと知ってほしい」。

金子さんが農に関心を持ったのは、大学2年生の頃。三重県の中山間地域へ1カ月間の農業インターンに行った。現地に着き、お世話になる農家へ挨拶をしたが、返事もそっけなく、会話もなく、金子さんを放って、すぐに田んぼに作業に行ってしまった。しかし、一緒に作業をして、一仕事終えると、はじめてニコッと笑ってくれたという。見た目は厳格な農家さんのシワクチャな笑顔が忘れられず、衝動的に生産者へのイメージを変えたくなったのだ。

金子さんは、休学していたことで、大学を卒業するのは2016年3月。卒業後は、一般企業に就職しないで、アグリスタを法人化して、事業を展開していく予定だ。金子さんの挑戦は始まったばかりだが、いつか、廃校を利用して、グラウンド全面を農地として利用し、宿泊型の農業体験施設を運営してみたいと、壮大な夢を描く。

◆アグリスタの公式サイトはこちら

[showwhatsnew]

スクリーンショット(2014-09-24 21.39.05)