NPO法人Youth for 3.11は東北にボランティアとして大学生を派遣する中間支援組織だ。同団体は東日本大震災から、延べ1万7000人以上の大学生を送ってきた。代表理事の永田和奈さん(お茶の水女子大学文教育学部3年)は東北で復興に取り組む、「あの人のために」という思いで、学生に呼びかけるが、派遣先団体の顔が見えるようになるまで、直に現場には関わらない中間支援組織ならではの悩みもあった。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

石巻で漁業支援の手伝いをする永田さん(写真右から2番目)たち

石巻で漁業支援の手伝いをする永田さん(写真右から2番目)たち

永田さんの悩みとは、同団体で大学生と東北をつなげても、復興の一助になっているという手応えを感じられないことだった。彼女が同団体に加入したのは、大学1年生のとき。それ以来、石巻や気仙沼、陸前高田など、被災直後の東北の現場を訪れたが、被災した建物や傷ついた人の姿を見るたびに、「何かしたい」と焦りが募る一方だった。

同団体では、2011年3月11日から、延べ1万7000人の大学生を、東北で活動するNPOやボランティア団体に派遣してきた。派遣先のツアーもさまざまで、仮設住宅に暮らす漁師のもとで数週間ホームステイするものから、日帰りのものもある。

多くの大学生と東北をつなげてきたが、永田さんは、「なかなか手応えを感じられなかった」と打ち明ける。ボランティア団体に送客することだけでも価値があることだが、現場で直接人と携わることはしないため、裏方としての意義を見出すことができずにいたのだ。被災現場を見ていただけに、「本当に役に立っているのだろうか」と自問自答を繰り返した。

そんな永田さんだが、今年4月で、大学最終年となり、同時に、同団体の代表に就任する。1年生のときに感じた悩みは徐々になくなってきたと言う。その要因の一つに、「顔が見えたこと」がある。

永田さんは、「今では、派遣先地域それぞれでがんばって活動している人たちの顔が浮かぶ。津波でご両親を亡くしたのに、懸命に両親が好きだった土地の復興に勤しむ人もいる。そんな人たちとたくさん出会ってきて、『あの人のもとへ届けたい』という明確な思いで集客できている」と話す。

気仙沼では農作業も行った

気仙沼では農作業も行った

震災から4年が過ぎ、永田さんの意思はぶれなくなったが、社会の関心度合は下がった。同団体の派遣人数も、2014年度と前年度では1500人ほど差がある。

この状況だが、永田さんは、「東北に若いうちに行ってほしい」と訴える。永田さんが「若者」にこだわるのは、彼女自身が、高校を卒業して2週間後に、初めて東北に訪れて、得た体験から来ている。

永田さんは埼玉県内の進学校に通い、学歴第一の教えで育った。大学受験では、「東京大学か京都大学」と周囲からの無言のプレッシャーがかけられ、偏差値で行き先を選んでいた。

その教育環境から、数字や立場で物事を見る癖があったが、初めて訪れた岩手県大槌町でその考えが崩される。そこでは、学歴は関係なく、「人と人が向き合う関係」が求められたという。被災地では、同世代だけでなく、多様な世代がいて、国籍や職業、価値観が異なるさまざまな人がいる。だからこそ、一人ひとりと話し合い、関係を築いていく必要があった。

永田さんの「若いうちにこそ、東北に行ってほしい」という言葉の裏には、「学歴や立場だけで、物事を考えないでほしい」という思いがある。特に、大学受験を控える高校生は、偏差値で進路を決めてしまいがち。だからこそ、高校生の時期に、「一度東北で人と向き合う体験をして、それから進路を考えてほしい」と薦める。

同団体では、まさに今、クラウドファンディング「READYFOR(レディフォー)」で、高校生をボランティア団体に派遣するプロジェクトに挑戦している。目標金額は100万円で、73人から66万円が集まった。残り8日間で34万円の支援が必要だ。

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