昼休憩を挟んで、マンベジに到着する頃には昼の1時になっていた。「村と言うよりは、割と町だよ」とは聞いていたが、初めて見たマンベジは実際、中堅の町である。まず向かったのは公立マンベジ病院。入るとまず目に飛び込むのがアサド大統領の巨大なポスターだ。

その前でごった返している患者たちは、顔以外を覆う布を羽織る肌の焼けた「村の女性」という感じのおばさんや、赤い布を巻いたベドウィン(砂漠の先住民族)のような服装の人が目立ち、やはりダマスカスとは違う。その間を抜け、2階に上がり、僕らの仮事務所となっている一室に入った。机とイス、コピー機が準備されてはいるが、閑散としている。これから、どんな活動をしていくんだろう?不安もあるが、楽しみの方が勝り、ワクワクしてくる。

少し待つと、大きな体にひょうきんな表情の持ち主が現れた。カウンターパートであるDr.アフマドだ。僕らが、たどたどしいアラビア語で自己紹介をすると、愉快そうに、嬉しそうにうなずく。よく来てくれた、と。そして、今後のことについて少しDr.アフマドが説明してくれた。今日はJICAからシリア人スタッフも来ているので、Dr.アフマドのアラビア語の説明を英語で通訳してくれたのだが、まるでアラビア語がわからない。いやはや、アラビア語をわからないことには、活動どころじゃない!というのが、ひしひしと感じられた。

暫くすると、部屋に背の高い、ほっそりとした若い女性が入ってきた。名前はディナ。ヒジャーブ(髪の毛を隠す布)とサングラスをつけ、お洒落で洗練されてる美人で、大きいとはいえこの田舎町では珍しいタイプだ。彼女は、マンベジ郡保健局の局長かつマンベジ市ヘルスセンター長という肩書きの、多忙すぎるDr.アフマド(実際、面会中も携帯電話が何度もかかってきた)の秘書として、短期の契約で雇われているとのこと。

Dr.アフマドに代わって、僕らの身の周りの世話も焼いてくれるらしい。見かけから、ちょっとつっけんどんなのかな?と思ったけれど、全くそんなことなく、楽しそうに笑って冗談を言う。今後、家族ぐるみでものすごくお世話になる人だ。

これからもよろしく頼むよ、と言いDr.アフマドと力強く握手して、初対面は終了。「協力隊員って、行ってみたら何も無くて、カウンターパートも居なくて、何をすればいいかもわからなくて、最初は途方に暮れる」っていうイメージがあったが、僕らは、色んな風に準備され、世話を焼いてくれ、来たことを喜んでくれている。歓迎されている、期待されているというのは、プレッシャーでもあるけれど、楽しみでもある。いよいよ気合が入ってくる。

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