似た例として、あるスポーツジムで会員数の増加を挙げよう。そのジムは会員増のために様々な販促活動を行なうが、退会者が相次ぐために会員数は伸び悩む。退会理由を調べてみたところ、会員が増えたがためにマシンやスタジオの利用者が増加したために待ち時間が増えて不満が出てきたからであった。いくら新規会員を増やしたところで、好結果にはならないはずである。そこで、ここのスポーツジムが考え出したのは「温泉施設の充実」であった。マシン・スタジオの利用とは別のところで会員を増やすことにしたのである。結果、会員数は伸びた(参照:『なぜあの人の解決法はいつもうまくいくのか』枝廣淳子・小田理一郎、東洋経済)。まさか保健センターに温泉を作るつもりはないが、「保健センターで健康診断をして欲しい」と言うためには「広報」だけでは不十分なのは確かだ。

ではどうするのか、である。具体的な行動としてはまだ取れていないのだが、アイデアとしては色々と考えている。例えば、「保健センターへの感謝の手紙」。実は4年程度で医療スタッフは転勤することが多く、村にも住んでいない(アレッポやマンベジ市から通う)。なので「自分の村」という意識も薄いだろうと思う。すると村のためよりも自分のクリニックを優先したくなるだろう。

そこで、給料以外の「やりがい」を芽生えさせる仕掛けとして「お礼の手紙」を、学校の先生と巻き込んで子ども達に書いてもらうのもひとつの手ではないだろうか。他には、「保健センター祭り」や「村民手書きポスター(保健センターの仕事やドクターが確実に居る日を広報)」を作っていく中で、保健センターと住民の距離を縮めることもできるだろう。

配布先で「水を頂戴」と言うと家に招待される

配布先で「水を頂戴」と言うと家に招待される

「月イチ母の日」というのを勝手に作ってしまうというアイデアも考えた。どんなことができるのかは相手に委ねてしまえば、彼ら自身の最適な方法で母を思い遣る行動が出てくるはずだ。また、母の手伝いをする中で「お母さんの仕事って、こんなに大変なの?」という気付きがあり、普段の生活に変化が生まれるかもしれない。保健センターとは関係ないが、「どうやったら問題解決できるか」ではなく、「本当の問題・目的は何か?」と問うことこそ大切であり、母子健康という本来あるべき目的に沿うはずである。

負のサイクルがあるのであれば、たた単純に「これまでやってきたことの更なる努力」ではなく、「新しいものの見方(breakthrough)」が必要だ。工夫と発想。それこそが求められているように思う。 

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