タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう
なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)
◆
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◆末広
敏夫は「そのまま」の声で固まってしまった。
しかしすぐ、「そのままお続け下さい」の意味と分かって力を抜いた。
啓介が立ち上がって挨拶をしようとするとそれを制して「そのままどうぞ」と、その無精髭の太って大きな男が言ったので、少し腰を浮かせて頭を下げただけで啓介は座りなおした。「捜査みたいに言わないで下さいよ」
首を回して敏夫が言った。
「いやいやすみません」
ずかずかと入ってきた50半ばの男は、啓介の横で無遠慮に胡坐をかいた。彼の後ろにいたもう一人の人物が現れた。背の高い50年配の温厚な顔が微笑んでいる。
「桐嶋です」
とグレーのタートルネックにツイードのジャケットの人は丁重に頭を下げた。
「桐嶋さんはジャーナリストです」
末広は言った。「そっちに座ったら」
店の主人が言った。
「予約くれたのは末広さんですか?」
「そうだけど」
末広は怪訝な顔をして答えた。
長い間床屋に行っていないらしく、髪の毛がボサボサで日焼けして、太編みのハンドニット、カウチンセーターを着ているからエスキモーの様に見えた。
「私だ!なんて言って電話を切ってしまうから、てっきり
“ワタシダ”と言う人だと思いましたよ」
「”ワタシダ”さんのビールを飲んでるかと思って、緊張してしまいましたよ」敏夫が笑いながら抗議した。桐嶋も笑いながら敏夫の横に座った。
「俺たちもビール、いいよね?」
末広は桐嶋に念を押すようにして主人にオーダーした。
「末広さんに、取材に来たら飲みながら話そうと言われて強引に連れてこられました」
桐嶋は言った。
「地球温暖化と自然再生エネルギーの問題を書いているのです。末広さんがその事業をされているので、取材しています」
啓介はかっこいいなーと思った。この人は自分の意志でしゃべったり書いたりするんだ。
「自然再生エネルギーってなんですか」
啓介が聞いた。
「太陽光や風力みたいなやつかな」
末広が答えた。
「私、吉井啓介と申します」
啓介は名刺を二枚出して、末広と桐嶋に深々と礼をしながら差し出した。
「保険屋さんか」
末広は名刺を眺めて言った。
「ウチの施設にも保険はかけないといけないな。ところで皆さんなんでも好きな物を頼んでください」
お上が品書きを持ってきて、皆がそれを眺めていると末広が言った。
「面倒だからまかせるよ」
お上がにこにこしながら品書きを手元に戻すと、主人が
「小名浜から上がったサバがありますが、、、」
と言うと末広は
「なんでもいいから早く持ってきて来てくれ」
といってビールを飲み干した。
飲み干すと桐嶋に向かって言った。
「こちらの方、輿水さんが、土地を売るか貸すか検討して下さるんだ」
「これからの日本にソーラーは意義が大きいですよ。私は、原発の危うさをチェルノブイリのときから書いているんですが、日本は地震国だからね。怖いです」
桐嶋が言った。
文・吉田愛一郎:私は69歳の現役の学生です。この小説は私が人生をやり直すとすればこうしただろうと言う生き方を書いたものです。半世紀若い読者の皆様がこんな生き方に興味を持たれるのであれば、オルタナSの編集スタッフにご連絡ください 皆様のご相談相手になれれば幸せです。
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