「日本にない『未来のかたち』が、ニュージーランドにはある」。そう語るのはニュージーランドで次世代社会づくりを支援するKiwi J ana(キウィ・ジェイ・アナ)社の及川孝信CEOだ。同社は働き方、家族、教育、公共の4つの視点で、日本流×ニュージーランド流=「次世代創造」「次世代人材育成」に取り組む。及川氏は「起業家とは、社会のマジョリティーが必要ないといったものを信じられる人」だと言う。(学生による被災地支援のための市民メディアプロジェクト支局=西 樹利香・武蔵大学社会学部メディア社会学科3年)

インタビューを受ける及川氏

インタビューを受ける及川氏

及川氏は28歳でビジネスコンサルティング会社を東京で創業し、「地域のものづくりを支援する」会社を設立した。ものづくりにとって大切なのは外とのつながりである。

及川氏は「地方を回っていると、どの地域でも同じような問題が上がる。だからこそ地方に住む人々が『外』と自分の街を比較することが大切であり、自分の地域だけを見ている街づくりは失敗してしまう」と言う。

及川氏が5年間、地方のものづくり支援をしていた中で、それぞれの地域が抱える課題や若者減少を目の当たりにしてきた。これらを根本的に解決するには、街や地域、社会を変革するための「新しさ」を見つけなくてはならない。

また、及川氏が日本で働いている際、長時間労働をし、家族より仕事最優先という日本の社会構造に対して違和感を持っていたという。

それらを解決するためのヒントがニュージーランドにあった。1980年代のニュージーランドは財政危機状態にあった。そして、財政危機を乗り越えるために、国家公務員を6割削減し、国家事業を8割削減した。ニュージーランドは、中央集権的政治から地方分権へと転換したのである。

そしてニュージーランドという「多様性受容社会」が構築された。地域が一番の権限を持つことで、市民の意見がしっかりと反映される社会が作られている。地域開発では、市民の声が優先されるのも特徴的だ。ニュージーランドでは、日常の全てにおいて家族が優先され、家族で過ごす時間を最も大切にする。

及川氏は、ニュージーランドの仕組みを日本の地域活性化とつなげれば、日本社会の様々な問題解決につながるはずだと確信した。そして、ニュージーランドで人生2度目の起業を行ったのである。

■フォロワーと起業家の違い

「敵がいっぱいいる中で、10年後当たり前になっていることをやるのが起業家である。そして、その明確なビジョンと手法と仲間を持っている人が成功する」(及川氏)

及川氏によると、大事なのは非常識を常識化することであり、それを最後まで信じることだという。みんなが賞賛することをやるのが起業家なわけではない。みんなが賛成してくれるものをやるのは起業家ではなく「フォロワー」である。

及川氏は事業の中で起業型インターンシップを行い、ニュージーランドの若者と日本の若者が交流する中での新しい価値観を提供する活動も行っている。ニュージーランドの人々の生き方や考え方を学ぶことで世界の中での「日本とは」を考えるグローバルセンスを身に付けることを目的としている。

これからの日本社会、そして次世代を担うのは私たち若者である。文献を読むだけでは得ることのできない「学び」がある。実際に訪れなければ分からない、その国のライフスタイルや考え方を体感することにより、自分の生き方を考えるヒントを得ることができる。そして常に「新しさ」に挑戦していくことが、筆者も含め今の若い世代に求められていることなのかもしれない。

Kiwi J ana社

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