仙台市では、東日本大震災を機にソーシャルビジネスへの関心が高まっている。市としても、社会起業支援に力を入れている。伊藤敬幹・副市長は、「震災で生まれた利他の意識を、社会起業へつなげたい」と話す。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

仙台市の伊藤副市長

仙台市の伊藤副市長

仙台市は2015年8月、国から、法律などの規制を緩和できる国家戦略特区に指定された。現在、福岡市や今治市、新潟市など全国に10区域ある。仙台市は、震災後の女性起業家の増加を背景に、同市を「女性活躍・社会起業の改革拠点」と位置づける。同市は東日本大震災以降、新たな事業所が全体に占める割合を示す「開業率」は2009年の4位から、2位まで上昇した。女性からの起業相談件数は2011年の56件から、2014年に444件に増えた。(出典:仙台市産業振興事業団調査)

起業相談に来る女性の年齢は30~40代が中心で、働いた経験がない人も少なくないという。仙台市の伊藤敬幹・副市長は、女性起業家が増えた背景について、「多くの人が地域のためにボランティアをして、自分自身の役割を見出した。フェーズが変わり、ボランティアだけでは続けていけなくなり、事業化へと発展した」と話す。

市としては、社会起業家へ、労働紛争を防ぐため、雇用に関する相談窓口を設けた。さらに、これまでに、約1カ月かかっていたNPO法人の設立認証の手続き期間を2週間ほどに縮めるなど、起業しやすい仕組みを整えた。仙台市としては、社会起業家の定義は定めず、「利他性のある事業を行う起業家」と言う。

社会起業家への資金的な支援はまだ施策としてないが、起業家コミュニティをつくっている。伊藤副市長は、「起業家は従業員に相談できない悩みを抱えていることがあり、孤独の存在。起業家どうしをつなげて、精神的な負担を減らせれば」と話す。

熊本地震で被災した被災者たちは助け合いながら、復興へと動いている。伊藤副市長は、「震災を機に利他の意識が芽生える。避難所から出るフェーズで、ボランティアだけでは対応できなくなる。自治体は、このタイミングを逃さないで、社会起業へとつなげる仕組みを用意しておいてほしい」と話す。

ビズリーチが運営する求人検索エンジン「スタンバイ」では、仙台市でソーシャルビジネスを行う企業・団体を掲載し、人材を公募している。4月20日、伊藤副市長は、ビズリーチが主催したキャリアセミナーに登壇した。同市の社会起業への取り組みや求める人材などについて話した。

ビズリーチ主催のキャリアセミナーで登壇した伊藤・副市長

ビズリーチ主催のキャリアセミナーで登壇した伊藤・副市長

経済産業省「ソーシャルビジネス研究会報告書」(2008年4月) では、国内のソーシャルビジネスの市場規模は約2,400億円、事業者数は約8,000。一方、1990年代から官民を挙げて取り組んでいる英国の市場規模は約5兆7,000億円、事業者数は約55,000で、日本の20倍以上。

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