トヨタ財団は5月19日、NPOに向けて、トヨタ自動車の問題解決手法を教える講座を開講した。公募で選ばれた30の非営利組織の幹部が受講する。同講座では、NPOの組織上の問題点を改善し、社会的課題の解決を後押しする。(オルタナS副編集長=池田真隆)

古谷健夫・トヨタ自動車業務品質改善部主査

古谷健夫・トヨタ自動車業務品質改善部主査

同講座の名称は、「トヨタNPOカレッジ カイケツ」。6回の講座を通して、トヨタ自動車の「カイケツ」を学ぶ。講師は、古谷健夫・トヨタ自動車業務品質改善部主査ら5人。30人の受講生は、取り組むテーマごとに6人1グループに分けられ、1グループに講師が一人付く。

トヨタ財団は1974年に創設。これまでの助成件数は約7900で、金額は179億円に及ぶ。この講座を始めた理由として、大野満・トヨタ財団事務局長は、「全国で社会的課題は複雑化している。助成金だけでなく、もっと踏み込んだ支援ができないかと考えた」と話す。問題の真の原因を探るトヨタ自動車のカイゼンのノウハウは、「あらゆる組織に適応できる」と言う。

■トヨタ自動車の「カイケツ」とは

同日、講師を務める古谷氏が講演し、トヨタ自動車の「問題解決」について話した。

古谷氏は、「カイゼンとはPDCAを回すことで、マネジメントそのもの」と説明。あらゆるサービスの品質を良くするために、カイゼンを行っていく。ここでいう品質とは、「期待に応えて満足感を与えるもの」という定義だ。

品質を良くするためにカイゼンしていくが、この品質を決めるのは、顧客であるため、「ばらつき」が生じることがある。このばらつきに対応すれば、新たな価値を創造することができるのだが、「そもそもこの変化に気付くことがポイント」と古谷氏。

いち早く、顧客のニーズをつかみ取るために、「SDCAが大切」と話す。SDCAのSは「標準化」という意味だ。「いつもの状態が分かっているから、いつもと違うことにすぐ気付ける。気付けば、PDCAを回して、新たな質の創造ができる」(古谷氏)。

「上司が指示したことが実行されていない」「同じようなミスを繰り返す」などの問題は、「ミスをした人のせいにしてはいけない」とし、必ずミスが起きる構造について調べ、真の原因を探るべきと強調した。

各グループごとに学びを共有する、写真奥は、講師の藤原慎太郎・トヨタ自動車業務品質改善部第1TQM室主査

各グループごとに学びを共有する、写真奥は、講師の藤原慎太郎・トヨタ自動車業務品質改善部第1TQM室主査

講座を受講したアダージョちくさ(名古屋市)の副理事長・富田倫弘さんは、うつ病やパニック障がいなどを持つ精神障がい者の社会復帰を支援している。2年前に始めたのが便利屋サービスだ。人の役に立つ仕事をしたいという思いと、単純作業が苦手なことから変化のある仕事を提供したいと始めた。

「便利屋への依頼はさまざまで、働くスタッフの価値観もさまざま。業務の標準化が難しかったが、カイケツの講座を受けて、SDCAのSの重要性を認識した。これから、さらに良いサービスを提供できるように、現状把握をしっかりして、PDCAに取り組みたい」と意気込む。

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