沖縄県にはこの8月に開局した局も合わせて計18局のコミュニティFM(コミュニティ放送局)が存在する。今回我々はそのうちの4局を訪れ、それぞれお話を伺った。ここでは地元民から愛され、83.7%という圧倒的な聴取率を誇り、映像配信などにも精力的に取り組む、「FMよみたん」について紹介したい。(武蔵大学松本ゼミ支局=内田 夏帆・武蔵大学社会学部メディア社会学科3年)

FMよみたん社長仲宗根朝治さん

FMよみたん社長仲宗根朝治さん

FMよみたんは沖縄県中頭郡読谷村にあるコミュニティ放送局である。沖縄県では10番目に開局した放送局だ。社長である仲宗根朝治氏が2007年、当時の副村長(現村長)の一言をきっかけに設立した。

地元の仲間や役場の職員までもが出資し、FMよみたんは誕生した。開局は2008年11月1日。この日は、読谷村での一大イベント、よみたんまつりが開催されており、さらにこの日は記念すべきまつり100年目の節目の日でもあった。

FMよみたんはこのまつりの様子を中継し、これを初披露の場とした。これには大きな意味があるという。この日、この場でFMよみたんが誕生したことには、この局もまた、100年続く局になるようにとの願いが込められている。

FMよみたんのブース。毎日さまざまな人がパーソナリティを務める

FMよみたんのブース。毎日さまざまな人がパーソナリティを務める

100年続く局に、これを表しているのがFMよみたんの個性とも呼べる、番組編成だ。FMよみたんは、ほかの沖縄の放送局と比べると、若者向けの番組が多い。実際、アンケート調査からも若者の聴取率が高いことがうかがえる。

年配層を意識するのであれば、民謡をかけることが多い(他の沖縄のコミュニティ放送局に多い特徴)が、仲宗根氏はそれでは100年続く局にはならないという。これから50年、100年続けていくことを考えれば、年配層ではなく、より若い世代に聞いてもらえる番組作りを心掛けなければならないということだ。

パーソナリティは中学生からお年寄りまで、それぞれ個性のある地元住民が務め、より、リスナーのニーズにこたえることができる。さらにこの放送局の役割を、地元の情報が収集され発信される、情報の共有がなされる場としている。これが聴取率83.7%とう数字を生み出す秘訣なのかもしれない。

FMよみたんの番組表。「お悔やみ放送」など、沖縄ならではの枠もある

FMよみたんの番組表。「お悔やみ放送」など、沖縄ならではの枠もある

そんなFMよみたん、もちろんここまですべて順風満帆であったわけではない。仲宗根氏は大きな壁は2つあったという。一つ目の壁はお金である。集めた資金は、機材の購入などもあり、日に日に減っていく一方であった。

このままでは回らなくなる。仲宗根氏は毎日昼の自身の番組が終了し次第、あとはスタッフに任せ、自身は営業へと専念した。ほとんどの時間は営業活動へと費やされた。

しかしやはり、話を聞いてもらえなかったことも多かったという。そんな中、自身の持つ番組を「ゆんたんじゃ出番ですよ」と変え、ゲストに「ゆんたんじゃ(地元民)」をよんだ。

読谷村のさまざまな企業の人もこの番組に出演した。これにはとても大きな意味があった。というのは、企業側としては、無料で、一時間も話をする(宣伝)ことができ、FMよみたんとしては、これまであまり話を聞いてもらえなかったような企業でも、こうした機会に少なくとも一時間は話をすることができ、身をもってFMよみたんを知ってもらえる。そこから広告などの関係の話になっていける、このような戦略をとった。

「バーター制度」という制度もとった。これは「お金」での契約ではなく、放送局ならではの、「放送する代わりに」例えば新聞広告、LED、学生のPR、スタッフが来ているユニフォームなどを提供してもらう。現在、FMよみたんには驚くほどスポンサーが多い。

FMよみたんのスポンサー

FMよみたんのスポンサー

二つ目の壁は電波である。県営などの放送局の電波数は1000ワット、それに対し、コミュニティ放送局の電波はわずか20ワット。聞きたくても聞こえない家庭が多い。これではリスナーに放送局を選んでもらう以前の問題である。そこでFMよみたんは村で一番高いところにアンテナを移設することでこの問題を解決した。

そのほかにも、よりFMよみたんを知ってもらうために、「FMよみたん」よりも周波数「78.6MHz」のPR(「七八郎」というキャラクター、「78.6」が入る曲をかけるなど)や、イベントへの参加、前述の仲宗根氏の番組「ゆんたんじゃ出番ですよ」への全議員の出演、月に一度の村長の出演(災害時のためにリスナーに村長の声を覚えさせる目的もある)、より行政とも関わっていく放送をしている。

さらには、台風の多い沖縄県、災害時のラジオの役割というのも大きい。FMよみたんでも、「防災ラジオ検証実験」を6か月にわたり行い、来年ついに導入予定であるという。

7月に新拠点へと移ったFMよみたん、そこには大きなTVスタジオもあった。2009年よりUTV事業(ネット上での動画配信)をはじめ、番組の動画配信も行っている。

仲宗根氏は「映像」は「英語」にまさる言語だと語る。さらには現在、これら映像事業を生かした活動を考えている。地元の農作物と映像を結び付け、いわゆる生産者の見える買い物を促したり、ふるさと納税も始めたばかりだ。

今後の超高齢化社会において、福祉の面なおでも新しい可能性を探っている。仲宗根氏は「人より先にいかなければいけない(成功しない)」と語った。

・FMよみたんのHPはこちら

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