市民と自然、博物館をつなぐユニークな取り組みを行っている団体があります。大阪にある「大阪市立自然史博物館」のファンクラブが母体となって立ち上がったNPO。毎年11月には、自然史への敷居を低くしたいと、博物館と協働でフェスティバルを開催。活動について、話を聞きました。(JAMMIN=山本 めぐみ)

博物館と協働で、自然を愛する気持ちを育む

毎年開催される「大阪自然史フェスティバル」にて。大阪市立自然史博物館の入り口にあるクジラの骨の下で、各地から集まった様々な生き物や植物を研究するサークルが出店

大阪で活動するNPO法人「大阪自然史センター」。「社会と自然と博物館をつなぐ」というミッションの元、「大阪市立自然史博物館」のファンクラブ「友の会」やミュージアムショップの運営、年に一度の「大阪自然史フェスティバル」をはじめとする様々なイベントを企画・開催しています。

「博物館とコラボして、自然を楽しく学び、大切に思う気持ちを育むことが私たちの役目」と話すのは、スタッフの上田裕子(うえだ・ゆうこ)さん。

大阪自然史センターの上田さん。着ているのは、ミュージアムショップでも販売中のアンモナイトTシャツ

大阪市立自然史博物館と連携し、学芸員とコラボレーションしたワークショップやハイキング、市民参加型の調査や観察会など自然を学び楽しむための様々なプログラムを実施しているほか、博物館のミュージアムショップでは独自性溢れるオリジナルアイテムの企画・販売や書籍の出版なども行っています。

自然を研究するサークルと市民をつなぐフェスを開催

2018年のフェスティバルの様子。「きのこ好きのためのキノコサロン」ブースにて、キノコになりきる

大阪自然史センターが取り組む様々な事業の中でも、年に一度開催される「大阪自然史フェスティバル」は、大阪市立自然史博物館と協働で2003年からほぼ毎年開催し、今年で16回目になるという大きなプロジェクト。

「昆虫や植物、鳥、魚、きのこ…自然にまつわるいろんな面白い研究や活動をしているサークルがたくさんあって、博物館の学芸員たちが携わっている活動も数多くありましたが、面白い研究や活動をしていても、多くのサークルがそのうち消えていく。なぜなら自分たちだけで活動していて、露出がほとんどなく、リクルートがないから。せっかくのサークル活動を内部だけにとどめておくのではなく、友の会やほかのサークルと交流し、露出するという意味合いでスタートしました」とフェスティバル開催のきっかけについて話すのは、大阪市立自然史博物館・動物研究室主任学芸員の和田岳(わだ・たけし)さん。

今では、年に一度の一大イベントとなり、大阪だけでなく日本各地から出展があるといいます。

「今年は131団体が出展し、初めて海外、台湾からの参加もあります。昨年はフェスティバルを開催した2日間に2万人の来場がありました」(上田さん)

自然史科学に大切なのは「ローカリティー」

フェスティバルにて、和田さんもメンバーだという「なにわホネホネ団」のブース。たくさんの骨を並べ、被り物をかぶって来場者に紹介中

「狭い大阪であっても、地域ごとに生息する生き物は異なります。その生き物のことを知りたい、研究したいとなった時に、みんなを巻き込んでいかないと成り立たない。自然史を研究しようと思ったら、仲間を増やさないとできない。市民の方たちが参加してくれるということは、ほぼ必然」と学芸員の和田さん。

「自然史科学、特に生物学はローカリティー(地域性)が大事」といいます。

「フェスティバルもその延長線上で、一緒に生き物のことを調査する仲間を増やしていきたいという目的もあります」(和田さん)

さらに、年に一度のこのフェスティバルを楽しみにしているのは来場者だけでなく、出展者も同じなのだそう。

「出展が終わると『来年はどうしようか』ともう来年へ向けて企画してくださっているという出展団体さんのお話や、初めて来場者される方の『楽しかった』『また来たい』という声を聞きます。さまざまな団体が集まって自然のおもしろさを伝え、地域と博物館を結ぶことができるこのフェスティバルを、今後も継続していきたいと思います」(上田さん)

学芸員と市民、フラットな関係で市民の「参加しよう」をつくっていく

会場の2階「ネイチャーホール」では、NPOや一般団体が50団体ほど出展する

市民が積極的に参加するようなしくみが出来上がっている大阪自然史センターの活動。

「市民の方たちが『一緒にやろか』と思ってくださるノウハウを持っているのが、私たちの強み」と和田さんは話します。

「大きな博物館になってくると、市民と一緒に何かするということはほぼないと思います。でも、僕たちの場合は、地域を巻き込んでいくこと、そのアウトプットが次の新たなステップになっていきます」

「自然史科学の分野は、プロがどれだけ研究していても分かってないことはあって、逆に言うとそういう意味ではアマチュアにも開かれています。フラットな雰囲気ですが、そこにはそういった背景もあるかもしれないですね」(和田さん)

さらに、ここには学芸員のキャラクターも大きく関係している、と上田さんは指摘します。

「学芸員さんのことを『学芸員』ならぬ『学芸人』と呼ぶ方たちもいるぐらい、大阪市立自然史博物館の学芸員の方たちは、皆さん一人ひとりキャラクターが際立っていて、サービス精神旺盛で、面白い。学芸員さん一人ひとりに根強いファンの方がいて、その方たちが一緒になって活動に参加してくださっているというのも団体の特徴かもしれません」

「一方通行ではなく、市民と学び合う」

学芸員の横川さん

もう一人、植物研究室学芸員の横川昌史(よこがわ・まさし)さんにフェスティバルへの思いを聞きました。

「いろんな興味の入り口になるようなイベントなので、鳥なりきのこなり骨なり苔(こけ)なり…、とりあえず『楽しいな』『あのブース面白かったな』と思って帰ってもらえると嬉しいですね。そこから一つ何か興味を持ったものがあれば、博物館に来たりサークルに入ったりして、もっと深掘りしてくれたらいいなと思います」

「同じものを見ていても、人によって視点は異なります。100人の人がいたら、『なるほど、その考えはなかった』という意見をおっしゃる方もいます。博物館を訪れた方とそういうやりとりや交流ができるのが面白いですね」

ボルネオ島の生物と文化の多様性を記録する「バルネオカメラプロジェクト」のブースにて。ウツボカズラのグッズの紹介を聞く来場者

「この博物館自体が、一方通行ではなく、市民の人と一緒に学び合うという伝統があります。最近だと大阪では見つかっていなかった植物を市民の方が見つけて持ってきてくださって、それで大阪の植物に1種類仲間が加わったということもありました」

ミュージアムショップやワークショップの運営も

「大阪市立自然史博物館」のミュージアムショップ。「独自の品揃えと高いサービスや品質で、お客様と博物館の双方から評価をいただいています」(上田さん)

子ども向けワークショップの開催やミュージアムショップ運営、グッズの企画制作なども行っている大阪自然史センター。

「自然とのつながりを広げ、深めるための窓口として様々な活動をしています。博物館とか自然史と聞くと、何か自分とはかけ離れたことのように思うかもしれません。けど、実は身近に奥深いものがあって、そこにどっぷりハマると本当にいろんなものが見えてきます」

ワークショップでの一枚。カラスの剥製の前で、目を輝かせて話を聞く子どもたち

「何か一つのことにこんなに夢中になれる人がたくさんいるということを知ってもらうだけでも、一体何がその人をそんなに夢中にさせているんだろうと思ってもらうだけでも、また違ったものが見えてくるのではないかなあと思っていて、市民団体だからこその、そういう場や価値を提供していきたいと思っています」(上田さん)

フェスティバル開催を応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、「大阪自然史センター」と1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。「JAMMIN×大阪自然史センター」コラボアイテムを買うごとに700円がチャリティーされ、「大阪自然史フェスティバル」の運営資金となります。

「博物館や自然史への敷居を低くしたいと、フェスティバルは入場無料で開催しています。出展についても、企業ブースと販売ブースを除いて出展料はいただいていません。小・中学生のブースなどもあるので、できるだけ出展無料で誰でも参加できる場を続けていきたいと思っています。とはいっても、運営にはいろいろと資金が必要で、近年、開催にあたっての資金集めが課題の一つになっています。
毎年楽しみにしてくださっている方、そして今後このフェスティバルを通じて自然に触れ、自然を愛してくださる方たちのためにも、ぜひチャリティーに協力いただけたら」(上田さん)

「JAMMIN×大阪自然史センター」11/4~11/10の1週間限定販売のチャリティーTシャツ(税込3500円、700円のチャリティー込)。Tシャツのカラーは全11色、チャリティーアイテムはその他バッグやパーカー、スウェットも

コラボデザインに描いたのは、大阪に生息するホンドギツネ、ヒヨドリ、シマヘビ、アサギマダラ、アンモナイト、ゴキヅル。学芸員の方にも指示を仰ぎながら、細かなディテールにこだわっています。

チャリティーアイテムの販売期間は、11月4日~11月10日の1週間。チャリティーアイテムは、JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中!こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。

・「楽しい!」で市民と自然と博物館をつなぎ、自然に親しむ思いを深める〜大阪自然史センター
https://jammin.co.jp/charity_list/191104-omnh/

山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしている京都の小さな会社です。2019年11月に創業7年目を迎え、チャリティー総額は3,700万円を突破しました。

【JAMMIN】


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