月間60万人が利用する日本最大級のビジネスSNSウォンテッドリーの仲暁子CEOは、「転職サイトから、ビジネスパーソン全体に親しまれるインフラを目指したい」と語る。人とつながるITサービスは増えてきたが、同社はキャリアに特化したつながりで他社と一線を画す。今後どのように発展させ、どんな社会をつくっていきたいのか戦略を聞いた。(聞き手・オルタナS副編集長=池田 真隆)

ウォンテッドリーの今後の展望を話す仲さん

ウォンテッドリーの今後の展望を話す仲さん

――月間での利用者数を1200万人(2013年、生産年齢人口15~64歳:7901万人)に伸ばすことを目標の一つに定めております。国内の人口が減っていくなかで、どのようにしてこの数字を目指すのか、その戦略を教えてください。

:ウォンテッドリーは転職サイトですが、年間で転職する人の割合は、生産年齢人口の6%ほどで、その数は約480万人です。

このように転職市場は、もともと小さいので1200万人の方に利用してもらうためには、インフラ化していかなくてはいけないと思っています。

――インフラ化とはどういうことでしょうか。

:今年の夏ごろにリリースを予定しているのですが、チャットアプリを開発しています。ビジネスパーソン向けのチャットで、ビジネス上の情報交換がスムーズにいくように設計しています。

また、ウォンテッドリーの強みであるキャリア上のつながりを生かしたSNSとしても、価値を高めていきます。たとえば、ウォンテッドリーのアカウントでログインすれば、ウォンテッドリーでつながっている友達がシェアしたニュースが自分のタイムラインに流れ、キャリアに特化した有益な情報を得られるような機能の実装も予定しています。

フェイスブックのソーシャルボタンのように、企業の採用ページにウォンテッドリーのボタンをつけて、エントリー・シェアしやすいような仕組みも考えています。

インフラ化することで、日常から利用してもらえば、1200万人という数字は決して、大きくはありません。ミクシィユーザーは2000万人、国内のフェイスブックユーザーも2000万人、ラインは4000万人ほどです。そう考えると、この数字は、むしろ保守的な数字です。

――2012年からサービスを開始して、いまでは1万社が利用しています。その会社で働いている人の思いに重点をあてて紹介している点が、既存の転職サイトとは一線を画し、人気を博しています。ウォンテッドリーの利用者からはどのような声を聞きますか。

:利用している1万社のうち、4000社がIT系のスタートアップ、中小企業などです。よく聞くのが、人のつながりで採用できるので、面接に来た人が、実は東京大学の博士課程出身者だったりと、これまで出会ったことがない人から連絡が来たというものです。

インバウンド系ウェブメディアを運営する株式会社senは昨年できたばかりですが、1200人もの人から連絡が来たそうです。行政にも利用してもらい、宮崎県日南市では、IT系事業の幹部人材の採用に成功したと聞いています。

――御社では、働く人を通して採用活動をすることを、「共感採用」と銘打っていますが、1920年代のホーソン実験では、会社内のインフォーマルな関係が高いほど、生産性が上がると実証されました。御社が進める「共感採用」によって会社に人が集まると、生産性が上がったというデータはありますか。

:利用者からは、働く人に共感して入社してもらったので定着率が良いと聞きますが、生産性が上がったという正式なデータはまだ取っていません。

ウォンテッドリーでは、多くのエンジニアが働く

ウォンテッドリーでは、多くのエンジニアが働く

――今後、「共感採用で生産性が上がる」という仮説で、データを取ることは考えておりますでしょうか。

:2012年の立ち上げ当初は、データを取ることを考えていた時期はありました。PCの種類、オフィスでの飲み物、聴く音楽など色々な情報を分析すれば、究極のマッチングができると思っていました。

ただ、結局それは無意味だと思いました。趣味趣向のデータを取れても、人は時期によって変わってしまうし、なによりその都度データを入力するコストも掛かります。

それよりも、人とのつながり情報があれば、好きな音楽や趣味趣向などの情報を、まとめて分析することができると気付きました。

――それでは、人のつながりをもとにして、転職先の傾向を調べてはいますか。

:データはとっていますが、まだ何かに使っている段階ではありません。まだサービスは始まったばかりなので、そのデータを何かに生かすようなことは考えていないですね。

――2020年代以降の情報の流れはどうなっていくと予測されておりますでしょうか。また、その流れに合わせて、構想中のサービスがあれば教えてください。

:SNSで個人が情報をシェアする流れは変わらないと思うのですが、デバイスが変わっていくと思います。IOT(*さまざまなモノにインターネットを接続すること)の流れで、爆発的に普及するデバイスがどのような形になるのか注目しています。

ウォンテッドリーは、キャリアに特化した情報を扱っているので、職場で普及するデバイスと組めれば良いなと思っています。

うちのオフィスの各MTGルームには、アイパッドが取り付けられています。例えば、このような設備のある企業では、MTGで契約が成立するたびに、時期と天候情報などをアイパッドに入力しておけば、データが取れて、「雨の日で、午後なら、○○さんなら7割の確立で契約を結べる」など分析できます。

インターネットとつながることで、データを収束できて、未来の動きを予測できます。そのプラットホームがスマフォ以外で広がると思っています。

――インターネットとつながることで、働き方も変わっていくと思います。同じ場所に集まる必要もなくなるかと思うのですが、仲さんは今後どのような働き方をしたいと思いますか。

:生産性が上がる形がベストですが、うちがリモートワークを許可すると生産性が下がると思っています。ウォンテッドリーは単純作業でもないし、どこかの類似サービスでもありません。自分たちが掲げる理想を実現するためにつくっているので、クリエイティブさが不可欠です。

そして、クリエイティブな仕事は、ディスカッションでしか生まれないと思っています。人とのコミュニケーションの9割は言葉以外の、熱意や空気感などから成立します。テレビ会議になると、その9割が遮断されてしまいます。

うちの社員は、エンジニアが多いのですが、自発的に仕事に取り組んでほしいので、オフィスのつくりを、オンとオフに分けないレイアウトにしています。一般的なデスクから、カフェのようなスペース、リフレッシュできる卓球台も用意しているので、このオフィスでの働き方を一つのシンボルとして位置づけています。

◆仲 暁子(なか・あきこ)ウォンテッドリー株式会社代表取締役CEO
1984年生まれ。京都大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。退職後、Facebook Japanに初期メンバーとして参画。2010年9月、現ウォンテッドリーを設立し、企業と個人をビジョンでマッチングするビジネスSNS『Wantedly』を開発。2012年2月にサービスを公式リリース。

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