中央大学杉並高校の生徒たちが、世界一幸せの国として知られるブータン王国でお土産を開発している。同国では15歳から24歳の失業率が最も高く、生徒たちはお土産によって若者の就職難の解決を目指す。日本人観光客向けに同国の家庭でよく作られているお菓子などを商品化する。(オルタナS編集長=池田 真隆)
「ブータンには食べられるお土産がほとんどありません。だから、農家の観光収入はホームステイでの宿泊代に限られ、若者の就職難につながっています」――。7月27日夜、東京・神保町にあるフルッタフルッタ本社で、同校の生徒は企画内容についてプレゼンしていた。
聞いていたのは、フルッタフルッタの長澤誠社長や跡見学園女子大学マネジメント学部生活環境マネジメント学科の天海弘准教授ら。
生徒たちが考えている内容はこうだ。開発するお土産は、カプセとヒュンテと呼ばれるブータン王国の伝統料理だ。カプセはクッキーのような食感で、お客さんが来た時のおもてなしとして出される。ヒュンテは、餃子に近く、特別な日に出されるという。
どちらの料理も家庭料理なので、ホームステイを受け入れている農家へ新たな負担を掛けずに、収入増へつなげられると主張した。8月15日に渡航し、プランの実現性を検討する予定だ。3年後をめどに商品化を目指す。
生徒たちがブータンと出合ったのは、授業がきっかけ。同校には、グローバル人材を育成するための、「グローバルシティズンシップ講座」がある。この講座は、公益社団法人日本環境教育フォーラム(JEEF)と共同で開いており、昨年夏に同国を訪れた。そのときに、同国で起きている若者の就職難について問題意識を持った。帰国後、生徒たちでこの問題を解決しようと考え、お土産を開発することに決めた。
定期試験などをこなしながら、話し合いを続けて企画をまとめた。ネックだった同国への渡航費は、クラウドファンディングに挑戦した。最終日直前に目標金額の165万円が集まった。今後は、JEEFの協力を得ながら、商品開発へ取り組む。
今回、生徒たちがフルッタフルッタを訪ねたのは、マーケティングを学ぶため。同社では、ブラジル・アマゾンで森林が蘇るアグロフォレストリ―という農業技術で作られたアサイーを使った商品などを販売している。
プレゼンを聞いた長澤社長は、「うちの商品もアマゾンの環境のために買ってくださいと伝えてもうまくはいかなかった。買ったものがエコになる仕組みにするべき」と断言した。同社では当初は、「環境に良い」という特性を伝えていた。街中で試飲してもらったが、独特なアサイーの食感に慣れていない消費者からは、辛辣なコメントをもらったこともあったという。
そこで、バナナと組み合わせて商品化した。バナナを選んだのは、「誰でも知っている味だから」(長澤社長)。認知度が低かったアサイーだが、バナナと組み合わせることで、受け入れられていった。
近年、流行っている「スーパーフード」の流れに乗ることを勧め、食材の中にスーパーフードの原料が入っていれば、「ブータンスーパーフード」として宣伝できると伝えた。
同国では食品のお土産が少ないことについては、ビジネスチャンスだと強調。さらに、「世界一幸せな国」というイメージがあるので、「現地特有の言葉を商品名にするのではなく、幸せをキーワードにしてみてはどうだろか」とネーミングについてもアドバイスした。
一方、課題として、生産する工場がないことと衛生面の問題を挙げた。「食品を扱うため、一般家庭で作ったものを販売できるのか、調べなくてはいけない。また、国によっては使用禁止の食材もある。食品を扱うリスクについては、大人たちと協力して対応してほしい」。
幸せの国ブータンで、生徒たちはどのようなお土産を作るのか、完成が楽しみである。
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