タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう

なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)

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◆いざ出陣

次の日から装備を身に付けた練習が始まった。練習の前に皆を集めてダン吉田が言った。
「帝都大学はフットボールを格闘技だと思っている。たしかにそうだ。でも我々は球技をする。1年生クオーターバックの黒岩君はパスだけを投げる。映像のパスシーンは見たよね」ダンは続けた。「4年生の米田君はラインプレーも混ぜてくれ。それとフィールドキックのボールをセットするセッターの練習も頼む。キッカーの為にボールを地面に置くふりをしながら、立ち上がってパスを投げるなんていうプレーもあるぞ」

ダンはそう言ってデブたちの方を見た。「ラインはディフェンスラインからパサーを衛るだけだ。相手は我々がパス攻撃をするなんて思ってないし、パスディフェンスとはなにかも分かっていない」ダンは貧弱な体のプレーヤーに向って言った。

「バスケットボールの要領で散るように走って飛んでくるボールを受けてグランドの端まで走り込めばいい。走り込むだけで6点だ。それから君が」と言って中島の方を向いて「ボールをゴールポストの真ん中に蹴れ。それで1点追加なのはフィルムの通りだ」そしてもう一つの塊に言った「ディフェンスチームはその逆だ。相手はパスなんかめったに投げない。だだ荒っぽくぶつかって来てボールキャリアに低い姿勢でタックルして来るけど押し合うんじゃない。ただ彼らの突進を邪魔すればいい。とにかくクオーターバックとハイスクールからの経験者ディフェンスの金井君には小型無線機をヘルメットにつけておくから僕の指令通りに動いてくれ」

Shotgun formation-wikipediaより

そして再び残りの細い体の奴らに言った。「ディフェンスバックは浅く守ってランプレーだけに対処してくれ、相手も何本かはパスを投げるけどパサーもレシーバーもうまくないから、その内の4分の1しか通らない。だからタッチダウンは2本だけだ。12点から14点をパスで取られるだけだ。ランプレーは時間が点を取るのに時間がかかるからどんなに相手が強くても30点が限界だ。だから帝都大学は44点取る。だから俺たちは45点取って勝つんだ。オフェンスチームはタッチダウン5本で35点。木村君のフィールドゴールが3回成功するからプラス9点だ。44点になるだろう?それを全部パスとキックで稼ぐんだ」

「そんなにうまくいきますかね」木村が言った。
「負けてもともと」ダンは大きく笑った。

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