カンボジアでは1976年から4年続いたポル・ポト政権の時代、虐殺と飢餓による死者は70万人から300万人ともいわれています。1993年に内戦は終わりを迎え、現在は平和を取り戻しているカンボジアですが、内戦の爪痕は未だ残っています。そのひとつが「貧困」。ガスや水道のない生活を送るカンボジア農村部で、学校を建設し、子どもに教育の機会を提供するNPOを紹介します。(JAMMIN=山本 めぐみ)

■読み書きできない子どもたちが語り始めた夢

NPO法人HERO(東京)代表理事の橋本博司(はしもと・ひろし)さん(39)が初めてカンボジアを訪れたのは1999年。20歳の時でした。

NPO法人HERO代表の橋本博司さん。写真は、カンボジアでの実績が認められ、カンボジア王室から感謝状を授与された時のもの

旅行中、現地の子どもたちが橋本さんの元へ寄ってきて「内戦で先生が殺されてしまった。学校もないし勉強できる場所がないから、勉強を教えてくれないか」と声をかけてきたといいます。青空教室で算数や英語を教える橋本さんに、子どもたちが嬉しそうに夢を語り始めました。

「学校に通っておらず、読み書き計算ができない子どもたちが“医者になりたい”“先生になりたい”と夢を語り出した。一方で自分は、学校へ通い、教育を受け、恵まれた環境で育ってきたにもかかわらず、当時は夢も、やりたいこともなかった」

1校目の学校の完成式。最初の学校は屋根がトタンだった

子どもたちの夢と現実とのギャップにショックを受けた橋本さん。帰国する飛行機の中で「40歳までにカンボジアに学校を作る」と決めたのが、活動の原点でした。脱サラし、33歳で団体を設立。これまでカンボジアに16の公立の学校を建設し、5,000人以上の子どもたちが学んできました。

■学校に通えない子どもたちの背景にある「貧困」

内戦によって長く発展から遠ざかっていたカンボジアは、アジア諸国の中でも最貧国に分類されます。都市部でこそ幹線道路や交通の便が整備されつつあるものの、一方で農村部では、道路はおろか、電気や水道、ガスさえ通っていないのが現状だといいます。

学校の教室が足りておらず、村人でお金を集めて作った校舎。壁はバナナの葉っぱ

「都会から1時間車で離れるだけで人は井戸や川、雨水を生活用水にしているような状態。その中でもさらに貧困家庭は1日1ドル以下で生活し、最低限の風雨をしのぐだけのバナナの葉で作った家に住んでいる」。カンボジアの現状について、橋本さんはそう話します。

そんな中、学校の数が足りていなかったり、親の出稼ぎに一緒についていったりなどの理由から、学校に通えていない子どもたちが一定数いるといいます。
「私たちの調査によると、ある地域では10〜15%の子どもたちが学校に通えていない。その背景には“貧困”の課題がある」と指摘します。

農村部の村では、1日1ドル以下で暮らす最貧困の人たちもいる

そんな中、HEROでは、学校の建設にあたり、村の村長や校長先生の考え方を重視しているといいます。

「学校を建てても、建てて終わりでその後活用されなければ、意味がない。たとえ貧困の中にあっても、現場の大人たちに子どもたちにしっかり教育を受けさせたいという強い意志があれば、困難も乗り越えていくことができる。子どもたちが夢を持ち、自分の力で未来を切り拓いていく環境を用意するためにも、今後は現地の先生向けのリーダーシップ養成講座も開催したい」。

活動について、橋本さんはそう語ります。

■活動通じ、子どもたちに「ヒーローの姿」届けたい

団体名でもある「HERO(ヒーロー)」。そこに込められた思いを、橋本さんは次のように語ります。

「自分たちが通う学校を自分たちの手で作ってもらいたい」という思いから、学校作りは日本からのボランティアだけでなく、村の子どもたちも巻き込んで行う

「“ヒーロー”の定義は、『誰かに可能性を与える人』。僕たちの活動を目にした子どもたちが“こんなふうになりたいな”“楽しそうだな”と、憧れたり、思いを馳せるヒーローのような存在になって、その子の心に火を点けることができたらうれしい。いずれ、携わった村から新たなヒーローが生まれてくれたら」

HEROが建設した9箇所めの学校。屋根が瓦になり、造りもカンボジアの建設基準通りに

■カンボジアの子どもたちに絵本を届けるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、HEROと1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。

集まったチャリティーは、HEROが建設を予定している図書館に置く絵本を購入するための資金になります。

村には本がなく、図書館を作ると子どもたちが殺到し本棚の前から動かなくなるという

「本には、その人の可能性を広げてくれる力がある」。そんな思いから、学校のほかに図書館も建設しているHERO。図書館はおろか、絵本すらないカンボジア農村部に図書館をつくり、絵本に触れることで子どもたちの好奇心を刺激し、世界を広げる場を提供しています。

絵本は1冊あたり平均して日本円で350円ほど。Tシャツをはじめとするチャリティーアイテムの購入1枚につき700円が HEROへチャリティーされるので、1枚の購入で絵本2冊分のサポートができます。

「JAMMIN×HERO」1週間限定のチャリティーデザイン(ベーシックTシャツのカラーは全8色。他にスウェットやパーカーなどあり)

JAMMINがデザインしたコラボデザインには、絵本の中から飛び出すヒーローに扮したキャラクターの姿が描かれています。絵本を読んだ子どもたちが、その中のヒーローに憧れ、明るい未来を描いていく。そんな可能性を表現しました。

チャリティーアイテムの販売期間は、11月6日〜11月12日までの1週間。JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは、橋本さんがカンボジアで学校建設の活動をするに至ったきっかけや、HEROの活動について、写真と共により詳しいインタビューを掲載中!こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。

カンボジアの子どもたちへ、学校建設を通じ「ヒーロー」の姿を届ける〜NPO法人HERO

山本 めぐみ(JAMMIN):
京都発チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」専属ライター。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。

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