「就活で心を病むとかは、弱い人間だからじゃないの?」――そう思っておられる方も少なくないのかもしれません。4年前、私は就活ウツになりました。自分が就活でウツになるなんて、思ってもいませんでした。ちょうど、「ツレがウツになりまして」が流行っていた頃でもあったので、映画の世界の話だと思っていました。(オルタナS関西支局=田中ナル・株式会社ナオミ マーケティング・広報室)
「自分はウツになんてならない」
そう思っているあなたも、一歩間違えればウツになっていたかもしれません。
私は、ウツを経験して、就活で私みたいに苦しい思いをする人を減らしたい。
就活でしんどくなってしまったとしても、「私だけじゃないんだ」と思ってもらえる存在でありたい。そう思い、就活ウツの時の心境について綴ることにしました。
読んでいただけると嬉しいです。
私の夢は、教師になることでした。
中学2年生の時、席替えで隣になったクラスメイトに勉強を教えたことがきっかけで、
「人は環境が変われば、こんなにキラキラして勉強するようになるのか」と思い、人の心に灯をつけられる教師という職業につきたいと思うようになりました。
私の家は、経済的にあまり豊かではなく、でも、先生になるには4年制の大学に行かなければ免許が取れないということが分かったので、必死に勉強しました。
運よく、4年制の大学に入学でき、学習塾でアルバイトを始めたのですが、勉強を教えるにつれて、「人間的に未熟な私が、このまま先生になっても、子どもたちに伝えられることなんてないのではないか?」と思うようになりました。
そう思うようになったのは、ある生徒がきっかけでした。
その生徒は、勉強が大嫌いな中学生でした。私は、もともと勉強が好きだったので、その生徒の気持ちが全く分からず、「なんで宿題してきてないの?」「なんで勉強しないの?」と
授業中は、いつも頭ごなしに怒っていました。
数ヵ月たち、その生徒から、「先生を変えてほしい」という申し出がありました。
その時、相手の気持ちが分からず、自分の価値観を子どもに押し付けてしまう自分に気づき、「先生という立場で勉強を教える以前に、人間として成長しなければならない」と思うようになりました。
そんな時に出会ったのが、学び舎傍楽です。
学び舎傍楽には、働くことを楽しんでいる、いろんな大人がいました。
出会った大人たちは、働くことを楽しんでいる大人たちばかりで、しんどいこともあるけれど、やりがいを持って仕事をしている方ばかり。私は、その時はまだ、「お金を稼ぐことが働く目的」だと思っていたので、そこでの出会いで、自分の価値観が一気に広がっていきました。
船に乗って、航海に行くみたいに、ワクワクする毎日。
素敵な大人がたくさんいる社会に出てみたいと初めて思うようになりました。
しかし、ふっと我に帰った時、自分には何もないことに気づくのです。
勉強しかしてこなかった私。
先生になることしか考えていなかった私。
教師になる前に、社会を経験して、人間力を高めたいとは思うものの、やりたいことが、全く見つからなかったのです。
自分と違う価値観の人の話をちゃんと聞いて寄り添う力や、感謝をして生きること。この人と働きたいと思ってもらえるような魅力も自分には無い。
そんなモラトリアム人間の状態から、就職活動をスタートさせました。
これは、就職活動をしたかったわけではなく、ちょうど就活時期(大学3年の12月)と
モラトリアムの時期がかぶってしまったのです。
自分とは何か?どう生きたいのか?何をしていきたいのか?どうなりたいのか?
そういうことを考えぬまま就活をすると、
面接で何も答えられないんですよね。
お祈りメールばかりが届く日々…。
リクルートスーツを着ると、一気に冷や汗が出てくる。
スーツを着て、家のドアを開けようとすると、足が動かない。
頑張って電車に乗れた時もありましたが、めまいと吐き気がして途中下車。
『このままやったら死ぬ。死ぬくらいだったら、一旦就活やめよう。』
その時に告げられたのは、ウツ病でした。
そして、ちょうどその時期にあった教育実習も行けませんでした。
教職課程を取られていた方なら分かると思うのですが、
教育実習に行かないと、教師にはなれないんですよね。
最後の望みもなくなって、本当に絶望でした。
(後編に続く)