「フィリピンの貧困問題を解決したい」――そう語るのはフィリピン産のココナッツを原料とした商品を企画、輸入販売するココウェル(大阪市西区北堀江)の水井裕(ゆう)代表取締役。同社はココナッツオイルブームが起こる前から会社を立ち上げており、ココナッツ商品の普及を進めてきた。水井さんが会社を設立するに至った経緯と、フィリピンの貧困問題解決へと取り組む背景について話を聞いた。(オルタナS関西支局=古江 晃也)

ココウェル代表取締役の水井裕さん

――ココウェルを設立したきっかけは何でしょうか。

学生時代フィリピン留学中に目の当たりにした貧困問題がきっかけです。大学を卒業後、関心のあった環境問題についてもっと学びたいと専門学校に入学し、在学中にフィリピンのベンケット州立大学へ留学しました。

大学が企画していた首都マニラにある「スモーキー・マウンテン」と呼ばれるゴミ山の視察ツアーへ参加すると、子供たちが集まって必死でゴミを漁っていました。

田舎には仕事がないため、家族で都会に出稼ぎに出ても働く場所がなく、ゴミの中にある鉄くずやプラスチックなどを売ることでなんとか生活していると後で知った時、非常にショックを受けました。

フィリピンの都市部にあるゴミ山(写真提供:ココウェル)

この状況を解決するためには田舎に雇用をつくることが必要だと考え調べたところ、フィリピンの田舎にはココナッツが数多く育っていることがわかりました。

ココナッツを使って貧困問題を解決できないかと思い、留学を終えて日本へ戻った後、2004年8月にココウェルを設立しました。当時はココナッツ商品が日本ではあまり知られていなかったのですが、地道に商品を展開し活動してきました。

――フィリピンの貧困問題の解決を目指しています。どのような取り組みでしょうか。

原料であるココナッツの生産と、商品の製造を全て現地で行い雇用を生み出しています。ココナッツの生育は全てフィリピンの農家へ、商品の製造は提携しているフィリピンの工場へ委託しています。

提携しているフィリピンの製造工場スタッフ(写真提供:ココウェル)

また、商品が1つ購入されるごとに現地の農家へ3ペソ(2018年1月時点で7円)が寄付される「3PESOS for FARMER」にも取り組んでいます。寄付金はココナッツ農家を支えるため、新しい苗や肥料の購入などに使用されています。

――寄付につながる商品として何を販売していますか。

ココナッツを原料としたリップクリームや石鹸などの化粧品、ココナッツオイルや砂糖などの食品を販売しています。ネット販売がメインですが、直営店である東京の自由が丘店(世田谷区)をはじめ、全国のスーパーや自然食品店で購入することが可能です。

――フィリピンへの支援を継続するため、商品はどのように普及させていますか。

ココナッツを知らない人はいませんが、購入して活用している人はまだまだ少ないのが現状。実際に体験すれば選んでもらうことにつながると思い、食べることでココナッツの良さを体験できる場所として、2016年7月に日本で唯一のココナッツ専門カフェ「ココウェル カフェ」を大阪の北堀江にオープンしました。

当社の商品であるココナッツオイルを使ったカレーライスや、ココナッツシュガーを使った低糖質でココナッツの風味を味わえるアイスクリームなどを提供しています。

ココナッツ商品は低糖質で、太りにくいことから健康志向がある人に人気。ココナッツオイルは市販の植物油に含まれる長鎖脂肪酸と比べて燃焼しやすい中鎖脂肪酸が主成分のため脂肪がつきにくい。ココナッツの花蜜で作られるココナッツシュガーは低糖質で血糖値が上がりにくいという特徴があります。健康に気を使っている方にはぜひ一度、カフェで味わってほしいですね。

カフェではココウェル商品が使用されたランチプレートやデザートなどが楽しめる(写真提供:ココウェル)

――今後の展望について教えてください。

普段使っている油や砂糖を選ぶときにどんな効果や背景があるのかを意識することで、健康につながるだけではなく貧困問題の解決にもなる商品があることを知ってほしい。

ココナッツオイルブームが落ち着いた今だからこそ、ココウェルカフェなどで改めてココナッツの美味しさや効果を体験してもらい、広めていけるようにしたいと思っています。

現状日本や海外での販売がメインですが、最終的にはフィリピンの生産者たちが自国内で販売・製造を完結できるように自立へ導けることを目指しています。


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