2018年7月、ここ宮城県登米市中田町石森は激しく地域縮小が進んでいる。古い商店街の一画は、7軒中2軒に1人づつ暮らし、残り5軒は空き家と空き地になっているが、その周囲もほぼ同様だ。知り合いが「そうなったのはそこに暮らす人たちの選択の結果だろう」と言った。(特定非営利活動法人故郷まちづくりナイン・タウン事務局長=伊藤 寿郎)

確かに昭和以降の政治や経済、地域構築の制度設計には、住民の民意が織り込まれ、他地域に移住した多くの人たちも含めて自ら選択した結果だが、その判断材料となる外部環境要因が経済重視へと移った現在、ここ10年の働き方をもとに考えてみた。

地方の最大資源、自然の恵みである第1次産業からサービス業への大移動

グラフ1

登米市が合併して誕生してから10年の間に第1次産業では2,123人減少、第2次産業も2,020人減少、どちらも労働集約型産業として永年にわたって多くの就業者を抱えてきたが、現在では第3次産業が就業者全体の6割近くを占めている(グラフ1参照)。

また、人口に対する就業者数の割合は15.7ポイント増加しているが、これは主に年金受給年齢の引き上げによる高齢者の再雇用が増えた(60歳代3,743人増)ことが主要因と言え、再雇用が増えると給与額は下がり、登米市の賃金総額は10年間で約120億円減少した。

製造業、建設業、サービス業は企業努力で経営効率化し、全産業合計の生産高は62億円増加しているが、熟練者の継続雇用の効果も大きいと考えられる。

◆将来の登米市を担うべき若年就労者の大幅減少

一方で、20歳代の就業者は激減【7,056人→4,581人。36%減】しており、将来の地域経営に大打撃を及ぼすことが危惧される。

給与所得者が増加し続ける当地域において、グローバル化や流通改革などの経済社会の変化と年金制度改定や働き方改革などの外部要因の影響は大きく、働き方の選択はそれぞれが環境変化に適応しようとした結果と考えられるが、そのために登米市外に若者が流出することは将来不安が大きすぎる。

これらの現状を地域経営と言う視点で考えた場合、新たに生まれた「人脈不足と財源不足」と言う地域経営課題への対策は、従来の取り組みを根底から見直す必要があり、持続可能な地域への工夫と進化の努力が求められている。

そのヒントは人材や資金を内部循環させることにあり、次回は登米市の中でも高齢化、縮小化が激しい先進地?の「石森」で、小さくて地道な挑戦を続ける私たちの事例をお伝えできたらと思います。

写真は昭和45年頃、レジャーの代わりに農作業に行く子どもたち

「稲刈りを終えて、私を棒掛けの稲にお(ほにょ)に乗せ、姉と近所の同級生の3人を写したものですが、何故父は、当時珍しいカメラを農作業に持参して、大笑いしながらこの構図で写したのか、いま思い返しても不思議な一枚です」 


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