タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう

なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)

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◆硬直した組織

「既に、ある報道機関は動いているんだ」桐嶋が桃山に言った。「市や県の誰かと電力会社が結びついているのか。あるいは命令がなかったとしても何らかの忖度が働いているのか、さらに職員が誰のために忖度しているかが調査の対象なんだ」

桐嶋は続けた。「だけど、ある地元紙が調べた結果は拍子抜けするものだったんだ」
「何だったんですか?」原が眼鏡を直しながら言った。桐嶋がそれに応えた。「職員の一人が強烈な敵意をもって個人的感情で邪魔してるというんですよ」
「なぜですか」原が小首を傾げて聞いた。
桐嶋がさらに続ける。「杉山さんが、この方が営農型太陽光発電の農地転用の申請者なのですが、あまりに農業知識をお持ちなので、農業委員会の人や、県の農業を指導する立場の人が酷いコンプレックスをもってしまって、逆恨みの結果根深い意地悪をしているらしいと言っていました」

「なんか拍子抜けするね」桃山がため息を吐いた。
「そんなことってあるんですか」原が桃山に言った。この原と言う人物は噂以上だと桐嶋は思った。金融機関の理事長を極め、いまは政界財界に影響力を持つ。その人が自分たちの様な人間に敬語を使って丁寧に応対してくれている。
「農業関係の機関には往々にしてあるんです」と桃山が答えている。「特に地方自治体の役人は農業を勉強していない人が農業関係の役職に就任するという問題があるんだ。だから勉強すればいいのだが、それが勉強をしないもんなんだ。もともと勉強が嫌いだったり、ポジションがすぐ変わるからね。そんなところに杉山さんとか言う人が、穏やかな人らしいけど農業博士なんでしょ?理路整然と正論をいうから、痛くコンプレックスを刺激されてしまったそうだ」

「一人の意地悪がこんな損害をだすなんてことがあるんだねえ」と桐嶋が慨嘆した。「しかしやにわには考えられない事ですね」と原が言った。「念のためNon Gon党の弁護士にも相談したらどうですか。営農型太陽光発電は我々が最も推進するシステムで、これが日本を救うと我々は思っているのですから」
「有難うございます。しかし政治的な圧力や忖度の線も消えていませんので、両面で調査を進めます」

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