環境省では社会起業家によるリレートークを行っています。毎月、社会起業の最前線で活躍する起業家を一人ゲストに招き、創業した経緯や事業のつくり方など等身大の物語を話してもらいます。この特集「社会起業前夜」では、ゲストが話した内容から社会起業に大切なキーエッセンスを紹介します。(オルタナS編集長=池田 真隆)
第6回のゲストに登壇したのは、日本最大級の訪日観光客向けのウェブメディア「MATCHA(マッチャ)」を立ち上げた青木優さん。MATCHAは日本語、英語、インドネシア語、タイ語、ベトナム語、中国語など10言語に対応していて、アクセス数は月間500万を超えます。
訪日メディアとしては日本最大規模を誇る同社の広報戦略としては、3つ大切なことがあるといいます。一つは、「日本人の当たり前は、当たり前ではない」ということ。例えば、日本人にとって風鈴の音は言葉にしないでも想像できるのですが、言語化するために翻訳しようとしてもできなかったことがあるといいます。
コンビニのおむすびの開け方も同じです。日本人にとっては当たり前ですが、訪日客にとってはそうでないこともあります。MATCHAではおむすびの開け方を映像にしたところ、20万再生を更新するほどヒットしました。日本の文化や伝統、習慣を海外の人に伝えるためには、「外に出て、外側から日本を見ることが重要」と強調します。
2つ目に大切にしていることは、「そこでしか体感できないことを発信すること」です。MATCHAではこれまでに約6000弱の記事を配信していますが、多くの記事が編集者やライターが現場を取材して得てきた情報を一次ソースとして活用しています。
今の時代はスマフォで何でも検索できるようになっているからこそ、「分かった気になってしまう」として、「自分の目で見たり、触れたりすることで気付くことがある。原体験にこそ価値がある」と言い切ります。
最後は、「信頼できる外国人パートナーと組むこと」です。青木さんはスタジオジブリの作品が好きで、プロデューサーの鈴木敏夫さんの考えをラジオや本などで参考にしたと言います。ジブリは日本のアニメ文化を世界に浸透させた代表作ですが、配給会社はウォルトディズニーと提携しています。
実際にジブリ作品が受け入れられている国もあれば、そうではない国もあります。つまり、どんなに良い作品を製作しても、「その国で広めていくパートナーがいないと広がらない」とのこと。
MATCHAの創業は2013年12月。星野リゾートと資本業務提携を結び、スノーピークなどが株主になった、6期目を迎えた同社は31人の従業員がいて、その内の11人がルーマニアやドイツ、バングラデシュ人などの外国籍。将来的には半分以上を外国籍にしたいと言います。
今後は、「安全・安心」の情報整備にも力を入れていきます。青木さんは、「海外の人が日本にいるときに、災害情報が届いていないことがある。MATCHAが訪日客のインフラになるために欠かせない要素」と述べました。
このリレートークの次回は2019年1月17日18:30~20:30。ゲストは、本田圭佑の立ち上げた会社で社会貢献活動の責任者を務める二村元基さん。参加費は無料で、定員は20人。
SOLTILO株式会社 海外事業部 アフリカ統括マネージャー
二村 元基 氏
アシックス退職後、青年海外協力隊としてウガンダに2年間派遣。現地では村落開発普及員としてシングルマザーを雇用し、ウガンダ産レザーを使用したハンドメイド商品を開発、日本のフェアトレードショップを中心に販売する。帰国後、母子家庭を支援する社会福祉法人で働いた際に、ビジネスの力で根本的な解決方法を探ることを決意。2017年2月より、HONDA ESTILO株式会社(2018年4月よりSOLTILO株式会社)に転職し「サッカー(スポーツ、教育)で世界中に夢や希望を与え感動させ続ける」という企業理念の実現を目指している。ケニア・ウガンダ・ルワンダの機会に恵まれない子どもたちを対象としたチャリティプロジェクト「AFRICA DREAM SOCCER TOUR supported by Car -Tana.com 」を展開する責任者として、年間1000人以上の子ども達にサッカーのトレーニングを通じ「ひとりでも多くの子どもが自分の力で人生を切り開くこと」を目標に、日々邁進中。
開催概要
|日 時|2019年1月17日(木)18:30~20:00
|場 所|地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)セミナースペース (東京都渋谷区神宮前5-53-70 国連大学ビル1F)
|主 催|環境省(大臣官房 民間活動支援室)
|企画運営|地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)
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