私は渋谷のモスバーガーで動物性不使用のグリーンバーガーを食べながらこの映画のレビューを書いている。新型コロナウイルスにおける緊急事態宣言明け、映画館営業再開の初日、「人と人をつないで世界の課題解決をする」をミッションに掲げるユナイテッドピープル配給の「GREEN LIE グリーンライ・エコの嘘」をシアター・イメージフォーラムで鑑賞していた。(石田 吉信=Lond共同代表)

映画『グリーン・ライ ~エコの嘘~』

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” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]観客は私を含めて5人、平日の11時というのも、もちろんあるだろうが、その少なさに、映画館、映画配給会社、映画製作に関わる人たちの存続に対して少し不安に思った。

さて、渋谷を行き交う大勢の人々の中に「認証マーク」について知っている人は何人いるのだろうか?と考えてみる。

国際フェアトレード認証ラベル、レインフォレスト・アライアンス、FSC、MSC、ASC、有機JAS、持続可能なパーム油のための円卓会議、動物実験をしてない認証マーク、ヴィーガン商品のマークなどなど、今こうした認証マークは全部でいくつあるのだろうか?
調べてみるとフェアトレード認証機関だけでも世界に20以上あるようだ。

そして、実際にスーパーで認証ラベルに配慮して買い物をしている人が日本にどれだけいるのだろうかと考えてみる。

認証マークを知っていて、そのマークを選択の基準に買い物をする「エシカルな消費者」がいて、初めてこの映画の理解が始まるのかもしれない。

「サステナビリティって最近聞くよね」「フェアトレードって何?」「エシカルな商品は高いよねー」くらいの段階では、もしかしたらこの映画は理解が難しいのではないか?と思った。(この段階の人が日本人の大多数な気がしてしまうのは私の思い過ごしであってほしい)

「昨今、世界では、企業は、環境に配慮し、持続可能な発展に貢献していると声高にPRし、そういった商品に認証ラベルを付けている」という前提に映画は始まる。

もちろん、このドキュメンタリーは認証マークだけを取り扱っている映画ではない。

「実際には環境汚染や人権蹂躙をしている企業が、広報では環境や人権に配慮していると、グリーンイメージの上塗りをしていること」=「グリーンウォッシュ」についてドイツ、インドネシア、アメリカ、ブラジルを巡り、現場で戦う人々をインタビューするドキュメンタリー映画だ。

まさに、サブタイトルのまま「エコの嘘」について暴いていく映画だ。

この映画の監督であるヴェルナー・ブーテ氏と、ジャーナリスト・グリーンウォッシング専門家のカトリン・ハートマン氏がタッグを組んで世界中の問題に触れていく。

ウィットのある2人のやりとりは社会課題を扱ったヘビーな雰囲気を良い意味でライトにしてこの映画を見やすくしてくれる。

この映画は鑑賞の上で一つ、気をつけなければいけないことがある。
それは2018年に製作された映画ということだ。

なので、少しだけ情報が古く(もちろん海外製作と日本公開がズレるのはしょうがない)、サステナビリティに関しては刻一刻と変わる社会情勢なのでこの映画を「今」起こっていることと認識しないほうがよいかもしれない。

実際、欧州連合(EU)は19年3月に、輸送燃料へのパーム油使用を23年から30年にかけて段階的に廃止することを決定しているが、その内容は映画には出てこないし、ドイツは国内電力大手RWEも含め、2019年に2038年には石炭火力発電所を止めることを決めたので、この映画の内容には続きがあるのだ。

さて、2人が巡った旅を回想してみよう。

まずは、サステナビリティに貢献した企業を表彰するイベントだ。2人は世界最大の投資家ウォーレン・バフェットが会長を務める投資会社バークシャー・ハサウェイの取締役にインタビュー。

石油会社のフィリップ66へ投資している会社がサステナビリティのアワードへ出向いていることに対する矛盾を果敢に突いていく。

すると、取締役は「企業は営利が目的なのだから仕方ない」と話しだす。
こうしたことを考えるビジネスパーソンは少なくないだろう。
グリーンウォッシュやSDGsウォッシュではないだろうか?
これからの時代ウォッシュに対する精査が必要だ。

次の舞台はインドネシア・スラバヤ島。
インドネシアとマレーシアで「パーム油」の80%強が生産されている。
パーム油はアブラヤシの果実から得られる植物油である。
栽培と搾油工場のプランテーション(大規模農園)を広げるために、大量の森林破壊が行われている。森林火災による健康被害は深刻で、マスクを付けて勉強する小学生たちが印象的であった。

静かな燃え尽きた広大な大地に立ち尽くすブーテ監督、ハートマン氏、パーム油企業と闘う活動家フェリ・イラワン氏。

この映画の印象的な名シーンの一つだろう。
ほとんどの熱帯林が焼き払われたその場所にはかつて、どれだけ多様な生物が住んでいたのだろう?この3人と共に私は静けさの中で想いを馳せた。

二酸化炭素を吸収し、酸素を供給してくれる「地球の肺」である熱帯雨林をポテトチップス、チョコレート、カップ麺を食べるために我々人類は焼き払っている。

食品の裏面を見て「植物油脂」とあればそれがパーム油である。
日本は100%輸入に頼っているので、まったくもって他人事ではない。

これは食品に限定しているが、シャンプー、トリートメント、ボディソープ、歯磨き粉、洗剤等々もパーム油は往々にして使用されている。

私たち日本人の多くはパーム油を通じて、熱帯林破壊による温暖化、生態系破壊、不当労働に関わっている。

そこで、WWF(世界自然保護基金)が設立した、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)がある。

持続可能なパーム油の調達のため、7つの原則、40項目の基準を通過したRSPO認証マークの付いたものを選んだほうが自然や野生動物のためになる。

ここまでが、おそらく環境や動物に配慮した人の大方のリテラシーであり、購買指針だ。

しかし、この映画は、「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」は本当に環境や動物に良い取り組みになっているのか?ともう一歩切り込む。

実際にインドネシアパームオイルカンファレンス(IPOC)に参加した2人は、様々な会社や団体に質問を投げかけ、様々なことを暴いていく。

RSPO認証マークを付けているあの企業の製品は本当に環境や動物を保全するものであろうか?
森林を燃やしていないだろうか?
是非映画で確認し、その後の企業の変化を追っていただきたい。

さて、パーム油だけでまだまだ書きたいことがあるが、この後にも世界中を巡り、
グリーンイメージを上塗りした石油会社、石炭会社の実情、その会社によって汚染されている、環境被害にあっている様々な人々のリアルな声、EV車の裏側にある環境破壊、世界最大の石炭会社RWEの株主総会でのデモの実録は目を見張るものがある。

「名前やロゴや広告などのイメージ」で会社選びをしてはいけないと様々な例から学ぶことができた。

それにしてもBPのメキシコ湾におけるアメリカ史上最悪の原油流出事故の模様は言葉を失った。

是非、映画をご覧になって、この映画が製作された2018年以降にはこの映画に出てくる企業は本質的に改善されているのか?それとも更に悪化しているのか調べてみていただきたい。

実際に身の回りの生活消費剤から食品までどれだけのパーム油(植物油脂)が使われているのか確認していただきたい。

あとは自宅と会社が契約している電力会社は再生可能エネルギーを増やすことに貢献できているのか?それとも石炭や石油を応援する電力会社なのか?

この映画で印象的だった言葉は、「この名前にある〈グリーン〉は自然由来ということ?」「違います」というシニカルなやり取りと、「不明瞭な説明は代表的なグリーンウォッシュだ」という言葉だ。

企業はしっかり自社の取り組みに責任を持ち、消費者は日常で触れる製品の製造過程を知る責任を持つのが、今時代に必要とされていることだ。

大企業であればあるほど、広報に多額な資金を使える故に、イメージ戦略は強いので、
慎重に調べて購買をすることは、社会をよくしていくことにおいて、とても大切なことである。消費はその企業へのある種の投票なのだから。

この企業、この組織のサステナビリティへの取り組みで実際環境や社会は良くなっているのか?悪くなっているのか?を確認するべきである、と、私はこの映画から強く感じた次第である。

映画『グリーン・ライ ~エコの嘘~』

石田吉信:
株式会社Lond代表取締役。美容師として都内3店舗を経て、28歳の時に異例の「専門学校のクラスメイト6人」で起業。現在銀座を中心に国内外、計19サロンを運営中。1号店のLondがHotpepper beauty awardで3年連続売り上げ全国1位を獲得。「従業員第一主義」「従業員の物心両面の幸福の追求」を理念に、70%以上という言われる高離職率の美容室業界で低離職率(7年目で130人中5人離職)を実現。また美容業界では未だほぼ皆無であるCSR、サステナビリティに向き合い、実践の傍ら普及にも努めている。instgram

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