結婚式を通じて、LGBT(性的マイノリティー)たちを支援する寺院が京都の花園にある。1590年創建の春光院だ。同性間での法的な婚姻が認められていない日本で、2010年から同性カップルの仏式結婚式を執り行い、14年には京都の大手ホテルと提携し、LGBT向けウエディングプランを発表した。8年間の米国留学体験を機に取り組みを始めた川上全龍(かわかみ・ぜんりゅう)副住職(36)に同性結婚式に込めた思いを聞いた。(オルタナS関西支局特派員=磯部 亮太)
「私自身、かつては同性愛者に偏見を持っていた」。そう語る川上さんが自身の偏見に気付いたのは、友人のカミングアウトがきっかけだった。米国留学中、何気なく同性愛者をからかうような冗談を友人の男性に話したところ、表情が一変。男性は「僕も同性愛者だ」とカミングアウトし、こう続けたという。「同性愛者だからと馬鹿にするのはおかしい。君もアジア人という理由だけで差別されると不当に感じるだろう」。
じつは川上さんにも米国滞在中、人種を理由に差別を受けたことがあった。それだけに「アジア人とか同性愛者とか、表面的な要素だけで、その人の人間性を否定するのはおかしい」と実感。それまでの考え方を180度変える原体験にもなった。
帰国後は留学経験を生かし、外国人を対象に英語で座禅を教え始めた。そこで知り合ったスペイン人女性から「同性のパートナーと結婚式を挙げたい」と相談を持ちかけられ、2010年に初めて同性カップルの結婚式を執り行った。
これまでに5組のカップルが春光院で結婚式を挙げている。川上さんは「同性同士だからといって特別な結婚式をするわけではない」と強調し、「同性愛者、異性愛者の区別なく、結婚式を通して2人の人生の新しいスタートをより良いものにするサポートがしたい」という。
同性愛を巡る日本の現状については「日本で実際に同性婚が行われていることもあまり知られていないし、その是非が政治的な議論にすらなっていない」と指摘。ホテルとの提携を発表することで、同性婚の認知度を上げる狙いもあり、今後は異性愛者を対象にした勉強会などを開催し、同性愛への理解を深めていきたいという。実現を目指すのは、多数派の異性愛者が同性愛への支持を表明できる社会だ。川上さんは宗教家として取り組みを続けていく。
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