自然由来の完全生分解性の草ストローを輸入販売する兄弟がいる。原料はベトナムで取れる有機の野草を使った。紙ストローと比べて耐久性・耐熱性に優れ、ステンレス製のストローより安いことが特徴のエコストローだ。(オルタナS編集長=池田 真隆)
草ストローを販売するのは、東京農業大学国際農業開発学科2年の大久保夏斗さん(19)。今年の4月から販売を始めると、ヴィーガンカフェやオーガニックレストラン、雑貨店など約20店舗に合計1万本販売した。
このストローは自然由来でできており、道端の草木と同じように分解され、自然に還る。使用後は、牧場で飼育している動物の飼料や肥料にすることもできる。そこが「完全生分解性」と名乗る所以だ。
通常、サトウキビやデンプンから作られている生分解性プラスチックストローは、50度以上のコンポスト装置の中に、数週間入れることで分解できるが、このような環境は自然界にはあまり存在しない。
原料の野草(レピロニア)はベトナム・ホーチミン郊外の農村で、有機で作られている。高温・UV殺菌をしており、日本の検査機関による検査も通過している。
現在は合同会社を立ち上げ準備中で、6月中には法人登記が完了する予定だ。供給量を増やし、販売体制を強化する。課題は価格だ。流通している大半がプラスチック製のストローだが、相場は1本0.7円程度だ。一方、草ストローは1本当たり7円と10倍も高い。
ベトナムの農村部で働く生産者の自立支援や環境配慮になることを付加価値として地道な営業を続ける。今後は、大久保さん自身が大学生であることを生かして、「全国の大学の学食に売り込みたい」と言う。
■バックパッカーの兄から「草ストローを日本で売らないか」
大久保さんが草ストローに興味を持ったのは、兄がきっかけだ。3つ上の兄は大学4年だった2019年、バックパッカーとしてベトナムを訪れた。そこで、草ストローが販売されていることを知った兄は帰国後に「草ストローを日本に広めないか」と大久保さんに相談した。
SNSで海洋プラスチックの問題を知り、課題意識は強かった大久保さんは、兄からの誘いに二つ返事で乗った。ベトナム事情に明るくない大久保兄弟は、パートナーとして現地で出会った20代のベトナム人を選び、今年3月から原料の調達や生産管理、輸入販売のための準備を始めた。
起業した経験はおろか、ビジネスの経験もなかった二人だが、インターネットなどを使って独学で調べながら、手続きを終えていったという。
兄は4月から新社会人として民間企業に勤めているので、実質大久保さんが指揮を執る。「今年中に100店舗に卸すことを目標にしている」と話す。
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