【連載】コロナ後の持続可能性、気候変動と再エネへ④
新型コロナウイルスが起きた背景を、再生可能エネルギーを軸に考察していく連載企画第4弾。今回は、5月上旬に実施したESGをテーマにしたオンラインイベントの模様を紹介する。登壇したのは、ESGの専門家であるニューラル社長の夫馬賢治氏。海外のESG事情に詳しい夫馬氏は、「コロナショックを受けて、海外の投資家たちは積極的に気候変動対策に乗り出している」と断言する。コロナ後のサステナビリティを語った。(寄稿・平井 有太=ENECT編集長)
コロナ禍の最中、夫馬賢治著『ESG思考』(講談社+α新書)が刊行された。「E」nvironment(環境)、「S」ocial(社会)、「G」overnance(統治)の頭文字をとった「ESG」という言葉は、気候変動や格差の問題と共に、SDGsやRE100といったキーワードと並んで広く知られるようになった。夫馬はその第一人者として、大企業から政府にまでESG伝道師として活躍している。
同著を読んだみんな電力社員・長島がステイホーム週間となったGW、夫馬と同社執行部に抱えた想いをぶつけるべく、巣篭もりトークの配信を企画。当日の動画は、硬派な内容に相反して再生1万回に届きそうなほど、大きな反響を呼んでいる。
夫馬は世界の現状を、コロナショックを受けてなお、海外の投資家たちはむしろより積極的に「気候変動」や「格差」、「人権」問題に取り組む姿勢を見せていると解説する。かたや、ESG思考が浸透していない日本は腰が引け気味で、誰も強いメッセージを打ち出せないでいる。
世界の動向を敏感に察知している若者と動きの鈍い日本の中高年層のズレが、長島が言う「若者の一人として、企業が若者層にどう見られるか。世界にはグレタさんのような存在も出てきた中で、そこはポイントになっていく」という問題意識の根幹だろう。その点については、みんな電力執行役員・三宅も「グレタさんが出てきて最初に反発したのはおじさんたち。それは、自分たちがやってきたことを否定されたと思ったから」と頷く。
電力会社の視点から、三宅はコロナの影響を「こういう風に経済が混乱した時、大きく変動するのは原油価格。かたや再エネは燃料が不要で、アセットさえあれば発電し続ける。その意味における安定性は再評価されるべき」と指摘。もっと言えば、再エネは普及するだけ将来的に自国のエネルギーとなり、それは油田が国内にできるのと同じ。だからこそ今回のような騒動によって、「対立構造ではない変化はもうすぐそこだろう」というのが三宅の見解だった。
遡ればリーマンショックで、自己中心的な経営を散々叩かれた世界の企業は、自らの持続可能性を考える中で、「利他的であること」の重要性に気づいた。目の前の決算に心奪われるのでも「純粋な美談」でもない、「長期的な視点」の必要性については、夫馬も自著の中で繰り返し説いている。
曰く、「困っている時にこそ、もっと困っている人たちに手を差し伸べることができたら、通常時に戻った時に必ずファンになってもらえる。もし、より規模の大きい企業がまだ少しでも余裕があるのなら、ちょっとでも自分たちよりも苦しんでいるスタークホルダー(関係者)を支援しようと思えるか。長い目の視点と目の前のことだけを考えるのでは、有事の際に打つ手も、ジャッジの基準も変わってくるんです」。
これはまさにビジネスの世界で現在進行形で起きている、生物多様性を語る時の「利他行動」ではないか。それがコロナショックのタイミングで、種としてのサステナビリティを実現させようと言う時に存在感を示していると捉えると、ストンと腑に落ちる。
夫馬は、みんな電力のようなベンチャーだからこその可能性についても言及。「出すメッセージが芯さえ食っていれば、社会が実際に動いていくことを目の当たりにしてきた。国の法制度も現実にそれで変わってくるし、日本のRE100認定基準にすら、自分たちの考えを反映させられる。待っていても期待する変化は来ないのが日本。でもだからこそ、自分たちでつくっていける」
今は大企業ですらいつ破綻するかもしれない、動乱の時代。配信を通じて夫馬は、長島や若い世代からこそ学べる「現代はあらゆる課題が山積み。企業がそこに対して手が打てているのか、それらを好転させられているか悪化させているか」という、まさに「ESG思考」な視点を重要視していた。
*インタビュー全文はこちら⇒【初回】特別配信!|社会が求める『ESG思考』
【こちらもおすすめ】
・コロナ後の持続可能性、気候変動と再エネへ①
・ダニ先生、「新型コロナの背景に気候変動」
・コロナ後の気候変動、カギを握る「3.5%」の人々