2018年の初め。ウミガメの出血した鼻孔から、研究者がプラスチックストローを引き抜く様子を収めた動画が全世界で拡散され、それがきっかけとなり、アンチストローの動きがまたたく間に拡散していきました。

僕も大麦でストローを作るという活動で、アンチストローの動きに加わった1人です。今から10年ほど前、石川県小松市に広がる大麦畑を見ながら、僕は、ああ、ここにストローハット、麦わら帽子の原料、ストローがあるなあと思っていました。

1977年の角川映画『人間の証明』の中で語られる西條八十の詩「帽子」を角川春樹が英訳し、ジョー山中が歌った人間の証明テーマ曲。当時、映画公開前からテレビやラジオで大量のCMが流れていました。Mama, Do you remember the old straw hat you gave to me・・・というテーマ曲をバックに西條八十の原詩「母さん、僕のあの帽子、どうしたでしょうね?」というナレーション。

この時僕は「麦わら帽子ってstraw hatって言うんだ。ストローって、麦わらのことなんだ!」というのが強く記憶に残っていて、最初に小松市の美しい大麦畑を見た時に、ストローだ!ここにストローが生っていると思ったわけです。で、2018年にプラスチックストローへのバッシングが始まった時に、瞬時に小松の大麦でストローを作ろうと思ったわけです。

大麦ストローの商品化に際して、まずは実際に海岸にプラスチックストローが落ちているのだろうかこの目で確認しなくてはと、あちこち石川県の海岸を探し歩きました。

結果、自分で探した範囲では海岸にプラスチックストローは1本も見つけられなかったのです。たまたま見つからなかったのでしょうけれど、それより、衝撃的だったのが、ペットボトルを含めたプラスチックゴミの多かったことです。

現在、世界で海洋流出するプラスチック廃棄物は年間800万トンとされ、そのうち、ストローの割合はわずか0.1パーセントです。もちろん、割合が微々たるものだからプラスチックストローは問題ないと言うつもりはありません。

脱プラスチックストローは大賛成です。けれど、皆さん、プラスチックストローにはあれだけヒステリックなほど反対したのに、カフェなどのテイクアウトのプラスチック容器や大量に売られているペットボトル飲料に反対しないのは何故なのでしょう?

結局、プラスチックストローがあれだけ嫌われた理由は、ストローが無くても困る人が少ないからなのでしょう。障害を持つ人や子供は別として、ほとんどの人はストローが無くても困らない。

後、ストロー業界の規模は小さいけれど、例えばペットボトル飲料の業界は巨大で、ペットボトル廃止は影響が大き過ぎて最初から諦めてしまっている。だからプラスチックストローがスケープゴートにされてしまった。そういうことなのかも知れません。

でもね、僕はこの金沢の海のペットボトルだらけの海岸を見る度に、このままじゃマズイだろうって思うのです。