私が父の他界を機に生まれ育った「湘南」に戻ってきたのは、2019年春。これからは地元湘南で生き、仕事をし、死んでゆくつもりで帰省したことを覚えている。せっかく故郷に戻ることにしたので、何か社会貢献がしたい、私を育ててくれた地元に恩返しがしたい、とぼんやり考える日が続いていた。

カエルデザインとの出会い

そんな折、偶然カエルデザインさんの活動を知ることになる。カエルデザインとは、様々な障がいを持つ人たちがパートナーとなって、マイクロプラスチックなどの海洋プラスチックを回収し、アクセサリーに加工する、アップサイクルブランド。

過去にレディースアパレル業界に身を置いていた私は、一目で虜になり、湘南で回収したマイクロプラスチックを受け入れてくれるかと打診し、快諾して頂けたので、「湘南ビーチクリーンforカエルデザイン」と銘打ち、活動を始めることにした。

1人で始めたビーチクリーンだが、今では協力者も現れ、多くの方に参加して頂けるようになった。最近では若者や小さいお子様を含めた家族連れも目立つようになってきた。

大変喜ばしいことだが、本来「大人」が汚してきた海なので、その当事者である大人にも、もっと参加して欲しいとも思う。

若者の参加が最近では特に目立つ。彼らや彼らの子どもや孫の代までずっと綺麗な海を守っていかねばらない

人海戦術で海岸のゴミを拾うだけで、海の環境保全が出来るとはもちろん考えてはいない。

海岸ゴミの7割は河川から漂着するとも言われている。

そういった意味では、町ぐるみでゴミを減らす努力が必要であり、ひいては小さいころからの「環境教育」が重要なのだと、今では考えるように至っている。

ハブとしてのビーチクリーン

ビーチクリーンをやってみて初めて気がついたことなのだが、「海」は人と社会を結ぶ「ハブ」としての機能があるということだ。

具体的な例を挙げるならば、精神的なご病気で外出できない方が大好きな海でビーチクリーンなら!と、勇気を出して参加された方がいる。また、登校拒否のお子さんも参加され、大人に囲まれながら一生懸命ゴミを拾っていた。

2021年2月のビーチクリーンの参加者と

最後に、参加者の声を紹介したい。

「ゴミとして在るものが美しいものに生まれ変わる…。自分が生きた果てにゴミとなってしまったならば、最後に美しく世の中を彩るものとして死にたい。と、思うのです。『人間』として美しく在ることは、とても難しい…と、思えます。でも、この活動にはたくさんの人類が経済発展のために切り捨ててしまった、切り捨てざるをえなかった宝がきらきらと輝いているように私には見えました。」

この言葉を胸に、私はこれからも海に出る。


有限会社シナプス代表取締役 福室貴雅
アニメーション動画などを制作する会社を生まれ故郷の湘南で営む。
「湘南ビーチクリーンforカエルデザイン」主催
一般社団法人日本クリプトコイン協会理事
株式会社クリーション(クイックまつげエクステ)COO
元レディースアパレルデザイナー