病気や障がいのある兄弟姉妹がいた時に、親をはじめ周りの大人たちの意識がそちらに集中して、自分は頑張らないと振り向いてもらえない、認めてもらえないというしんどさや孤独を抱えがちな「きょうだい」の存在をご存知でしょうか。「生まれてきてくれてありがとう。ただあなたが、あなたとしていてくれるだけで嬉しいということを伝えたい」。きょうだいに20年寄り添ってきたNPOがあります。(JAMMIN=山本 めぐみ)

病気のある子どもの「きょうだい」のために活動

きょうだいさんと直接関わるイベント。「コロナ禍でも『鬼ごっこしたい』『みんなで体を動かしてあそびたい』と言ってくれるきょうだいさんたちのために、感染症対策をした上で、イベントを開き続けました」

NPO法人「しぶたね」は、たくさんのおとなのやさしい空気で子どもたちを包みたいと、直接支援や啓発活動を通じ、「きょうだい」を応援する活動を行ってきました。団体を立ち上げた清田悠代(きよた・ひさよ)さん(47)自身、病気のある弟を持つきょうだいでした。

「誰かがわるいとか、否定したいということではないんです。ただ、私の場合は両親の意識がすべて病気の弟に集中していて、自分のことも、もうちょっと見てほしい気持ちがありました」と振り返る清田さん。

「家の中に自分の居場所がないような不安や違和感があって、自分の人生なのに軸が自分の中にないようなしんどさを感じていた」と話します。

しぶたねは、きょうだいと直接関わる場の開催と、支援者の輪を広げ、社会に向けて啓発を行うことの2本の柱で活動しています。コロナ禍では、オンラインでの活動もスタート。毎週金曜日の夜に、きょうだいの集まりの場を設けているといいます。

「コロナで学校は一斉休校になり、きょうだいさんたちは病院に出入りすることも難しくなりました。きょうだいさんも親御さんにも、たくさんの我慢や緊張があったと思います」と話すのは、清田さんと共に活動する「たねまき戦隊シブレンジャー」のシブレッドさん。

お話をお伺いした清田さん(左)とシブレッドさん(右)

「オンラインの活動は、お友達にも会えず、遊びにもいけず、不安や退屈の中過ごしているきょうだいさんに会いたいと始め、その後も毎週続けています。日常の地続きで、きょうだいさんの日々に入れてもらっているのが嬉しい」と話します。

「僕らは『きょうだい』という入口で出会ったかもしれないけれど、『きょうだいだから』ということだけではないんですよね。子どもたち一人ひとりに、かけがえのない輝きや個性があって、きょうだいであることは、ひとつの側面に過ぎません」

「みんなかわいくてかっこいい『ただの子ども』。きょうだいとしてだけじゃない、日常の話を聞かせてもらえることは、僕らにとってもすごく嬉しいこと。だから、『きょうだいだから』と無理やり話を引き出したり聞いたりということもしなくていいかなと感じています」

「話すか話さないかは、相手やタイミングを見て一人ひとりが決めること。こちらが用意しないといけないのは、『いつでも話を聞くよ』という姿勢だけ。実際に話すかは別にして、きょうだいさんにとって、何かあった時に『この人に相談したいな』と思える存在があるかどうかが、大事なことなのではないかと思っています」

どんな時も「そばにいるよ」を伝え続ける

コロナ前、病院で開催していたきょうだいさんのための活動。「病院のイベントに協力し、病棟に入れないきょうだいさんの代わりに、きょうだいさんが作った人形が探検に行くプログラムを実施しました」

一方で、きょうだいとリアルに触れ合う場も、感染症対策と工夫をしつつ、開催を続けてきました。

「コロナでよりいっそう大変な状況にあるであろうきょうだいさんに、孤独を感じてほしくなかった。大人たちがなんとか工夫して、きょうだいさんのために続けるぞ、きょうだいさんのためにあきらめないぞという心が伝わったらいいなと思っていました」

「コロナ禍で入院すると、入院した子どもも付き添いのお母さんも1か月以上お家に帰れないこともあって、ほとんど会えない中できょうだいを亡くす経験をした子もいました。病院の中でも他のご家族との交流ができなくなっていて、お母さんの孤独感も高まっていました」

「コロナの間、開催できなかったのは一度だけ。募集をかけるとすぐに申し込みがいっぱいなり、親御さんたちも思い切って来てくださっていることも伝わりました」

さらに、きょうだいを亡くした子どもたちのための集まりの場もスタート。

「グリーフケアのスキルをもった専門家ではないけれど、いつもどおり目の前にいるその子と楽しく過ごしながら『いつでもそばにいるよ』と伝え続けたい」と話します。

「安心して、一緒に揺れられたらいい」

関わった子どもからの手紙。「きょうだいさんが書いてくれるお手紙は宝物です」

以前は、さまざまな感情を抱えるきょうだいや家族のあり方を「できるだけ揺らさないように」と考えていたと二人。しかしここ数年の活動の中で、「揺れても良い」と感じるようになったといいます。

「モビールに例えると、それを揺らす一つの風は止められても、また違う方向からも吹いてきます。全ての風は止められない。だったら、きょうだいさんが安心して揺れられるように、一緒に揺れられたらいいのかもしれないと」

「きょうだいさんの抱える日々の悩みや不安を、すべて解決はできません。でも、解決はできないけど、一緒に悩んで、考えることはできる。僕らにとっての今の最適解は、それかなと感じています」

「『同じ立場の仲間がいることで、心のモヤモヤがふわふわに変わった』と話してくれたきょうだいさんがいます。解決してあげられないもどかしさはあるのですが、おとなとしてできることのうちの一つを、やらせてもらえたらと思います」

「病気の人の家族に、温かいお茶を出せる仕事がしたい」

1996年、亡くなった弟さんと清田さん。「弟は真面目でまっすぐで、人に愛される子でした。『私の方が病気ならよかったのに』とずっと思っていましたが、弟が亡くなった後、たくさんの人との幸運な出会いに恵まれるようになり、弟の支えを感じています」

4つ下の弟が心臓病で、きょうだいとして育った清田さん。この活動を始めたきっかけは、弟が入院していた病院で目の当たりにした光景だと話します。

「日本のほとんどの小児病棟は、感染予防のために中学生以下のきょうだいは病室のある病棟の扉から先に入ることができません。病院へ行くと、幼いきょうだいさんが廊下でぽつんと一人、面会が終わるのを待っている姿をたくさん目にしました」

「2歳ぐらいの小さな子が『ママー!』と大声で泣きながら、それでも、小さいながらも病室には入ってはいけないとわかっているから、ぐっと堪えて我慢して、ただただ泣いている姿を目にして、胸が締め付けられました」

「その前をたくさんのおとなたちが通るのに、誰も声をかける余裕がなくて。『自分がおとなになったら、この状況を変えたい』と思ったのが、最初のきっかけです」

高校受験の二日前に弟が倒れ、「助からないかもしれない」と集中治療室の前でただ一人、制服姿でぽつんと座って泣いていた清田さんに、温かいお茶を出してくれた人がいました。

「『病気で大変な人の家族に、温かいお茶を淹れるような仕事がしたい』。そう思い、最初は病院のソーシャルワーカーになりたいと思いました。『きょうだい支援をやりたい』という思いはずっと心の中にあったけれど、弟に申し訳なさを感じて、心に蓋をしていました」

2019年、「きょうだい支援の会」の有馬靖子さん(写真左)、ドナルド・マイヤーさん(写真中央)と

弟が亡くなった後、「同じ立場のきょうだいに会ってみたい」と思い立ち、アメリカできょうだい支援を行う、きょうだい支援の第一人者であるドナルド・マイヤーさんのメーリングリストにたどり着いた清田さん。そこから、日本でマイヤーさんのプログラムを広めたいと活動していた「きょうだい支援の会」の有馬靖子さんに出会い、同じ立場のきょうだいとの交流が始まりました。

「自分がしんどかったこと、つらかったこと、モヤモヤ感じてきたこと‥それを言葉にしている方たちと初めて出会いました。『ああ、そんな気持ちが自分にもあった』『声に出していいんだ』とカルチャーショックを受けました。きょうだいとして心の中にあった、自分の苦しさに気づいたのです」

マイヤーさんからきょうだい児のためのワークショップ(Sibshops)のファシリテーター養成トレーニングを受けた清田さんは、2003年にきょうだい支援の活動をスタートしました。

「きょうだいを思う気持ち、
自分の人生を思う気持ち、そのどちらもあって良い」

しぶたねの講演資料の1ページ。「親御さんが何か足りないからきょうだい支援が必要というわけではなくて、子どもが大事にされる場は、いくつあってもいいと思っています」

「高校生で進路や将来の話を友人とした時に、周りの人たちの将来には選択できる自由がたくさんあって、キラキラと輝いているように見えました。私はこの先、病気の弟と一緒に暮らしていくから、結婚はできないし、家庭も持てないだろう。キラキラした世界は自分にはないんだと思い込んでいました」と清田さん。

「弟のことは大事で大好きで、まさかそんなことを思うはずがないと気持ちに蓋をしていたけれど、そこにつらさを感じていたということに、後になって振り返ってから気づきました」

「きょうだいのことを大切に思う気持ちと、それでも自分の人生は自分のものだと思う気持ち。そのどちらもあって良いのだということに、きょうだいとして生きてこられた先輩方を見て、初めて気づいたんです」

4月10日は「きょうだいの日」。「きょうだいや、きょうだいみたいなあの人、天国のきょうだい、いろんなきょうだいのかたちが尊重され、きょうだいの支援にもつながる優しい記念日になるようにと、この日を広げています」

「『生きていてくれるだけでいい』という病気のお子さんに対して、きょうだいさんは『がんばらないと見てもらえない、認めてもらえない』というしんどさも聞きます。『家の中で、病気のきょうだいは加点式、自分は減点式。親のきょうだいに対する扱い方のギャップがつらい』と話してくれた高校生もいます」

「『あなたは健康なんだから、病気のきょうだいの面倒は見て当たり前』という見方も、残念ながらまだあります。そんな中で人知れず傷ついたり、あきらめたりするきょうだいさんがいることがとてもつらい。『大変な人のそばにいる人もまた大変なんだ』ということが、もっと社会に広く知ってもらえるといいなと思っています」

「ここにいてくれてありがとう」を伝えたい

「コロナ禍で、きょうだいさんたちに商品をご寄付くださる企業さんもいらっしゃいました。企業の方々の優しいお気持ちを、私たちを通してきょうだいさんたちに届けられることがうれしかったです。こうして私たちの中に優しさが積もっていきます」

「きょうだいさんのことを知ってくださった方には、ありがとうとお伝えしたいです」とシブレッドさん。

「知ってくださったことで、次にきょうだいさんを見かけた時に、投げかける目線や言葉も変わってくるからです。もし周りにきょうだいの立場の方がおられたら、変わらずあたたかく接してもらえたら嬉しいです」と

「何の支援もなくおとなになり、しんどい思いを抱えて生きているきょうだいさんもたくさんいます」と清田さん。

「まだ全然できていない、手が届かなくて本当に申し訳ないと感じることも多いですが、応援したいと言ってくださるたくさんの方たちもいます。子どもたちには、やさしい社会を伝えていきたい」

「私たちは、きょうだいさんに対して、いつも『ここにいてくれてありがとう』なんです。『ここにいてくれてありがとう。あなたに会えてうれしい』ということを、これからも伝えていきたいと思っています」

団体の活動を応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、10/23〜10/29の1週間限定でしぶたねとコラボキャンペーンを実施、活動20周年を祝し、オリジナルデザインのチャリティーアイテムを販売します。

JAMMINのホームページからチャリティーアイテムを購入すると、1アイテム購入につき700円がしぶたねへとチャリティーされ、きょうだい支援、また啓発活動のために活用されます。

1週間限定販売のコラボデザインアイテム。写真はTシャツ(700円のチャリティー・税込で3500円)。他にもバッグやキッズTシャツなど販売中

JAMMINがデザインしたコラボデザインには、シーソーに乗って遊ぶ動物たちを描きました。きょうだいと見守るおとなたち、共に時間を過ごすことが、互いの力になる様子を表現しています。

JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中!こちらもあわせてチェックしてくださいね。

・「いつでも、心はそばにいるよ」。「きょうだい」に寄り添い20年、「しぶたね」のお二人が今思うこと〜NPO法人しぶたね

「JAMMIN(ジャミン)」は京都発・チャリティー専門ファッションブランド。「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週さまざまな社会課題に取り組む団体と1週間限定でコラボしたデザインアイテムを販売、売り上げの一部(Tシャツ1枚につき700円)をコラボ団体へと寄付しています。創業からコラボした団体の数は480超、チャリティー総額は9,000万円を突破しました。

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