日本勤労青少年団体協議会(日勤協)主催の「若者を考えるつどい2011」が10月16日都内で行われた。イベントにはエッセイコンテスト「働くってなんだろう」の応募者など中学生から70代まで幅広い年代の約180名が全国各地から参加した。
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エッセイコンテストの表彰式から始まった「若者を考えるつどい」。当日のイベントから東レ経営研究所特別顧問の佐々木常夫さんの基調講演、参加者によるグループディスカッションの様子をレポートする。
■ 佐々木常夫さん「ちょっとした気遣いを忘れないで」
佐々木さんは、大阪と東京を行き来する忙しい転勤生活のなかで、妻の3度にわたる自殺未遂や自閉症を抱える長男のいじめ問題などを乗り越えてきた。
のちに自閉症と判断される長男は生まれた時は普通の赤ちゃんだった。長男が生まれた翌年、翌々年と3人の子どもに恵まれた佐々木さん。
いわく毎日が「戦争」だったという。長男もすくすくと育っていったが、成長するなかで特定のものに固執するようになり、3歳のときに自閉症と診断された。入園した幼稚園には数カ月で通園を拒否された。学校に通うようになってからもなかなか馴染めずいじめられたという。
佐々木さんはいじめていた子どもを家に呼び息子の状態について丁寧に説明した。そして「君たち健常者には息子のような弱い立場の者を守る責務がある」と教えた。
佐々木さんは次のように説明する。「精神障がい者のみならず、身体障がい者、要介護父母、ひきこもり、ギャンブル依存、アルコール依存など世の中には何かしらのハンデキャップを抱えた人が多くいる。世の中は健常者ばかりで構成されているように思っているかもしれないが、こうした人を足し合わせれば1000万人は下らない。必要なのはちょっとした気遣いであって、そうしたことを忘れないでほしい」
以前オルタナSのインタビューの中で佐々木さんは「仕事をうまく行うためには他の人への配慮が必要で、自分の欲だけでは仕事はうまく回らない」と話した。その理念が氏の真髄なのだと改めて感じるエピソードだった。
■ 仕事は、お金のためでなく、社会とつながるため
イベントの後半には、各テーブルに分かれて「働くってなんだろう」をテーマにディスカッションを行った。筆者はパート主婦、工場経営の女性社長、サラリーウーマン、映画の脚本家を目指す男性というバラエティーに富んだグループに参加し、「主婦の働く」をテーマに話し合った。
「今は核家族が多くなってしまったが、私の頃は三世代で暮らしていたからおばあちゃんに子どもを預けて仕事にでかけることができた。社会が変わって確かに主婦は外に働きにいきづらいと思う」という女性社長。
パートで働きながら2児の子育てをしている主婦からは「出産後に再就職をしたくても子育てをしながら雇ってくれるところはなかなかない。働くというのはお金のためだけでなく、社会とつながっているという安堵感を得るためにも必要」という意見が出た。
mixiやFacebookなどのSNSが浸透しても、やはり生身の付き合いは必要で、そのためには保育所の拡充や会社の体制の問題、再就職の間口を広げるなど多くの克服すべき課題があるとの認識で一致した。
そうした中で筆者がはっとさせられた意見があった。ある男性が訴えた「これからは主婦のみならず主夫も増える。家で働きながら外で働けるようになることは決して女性だけの問題じゃない」という意見。
みなさんにとって働くとはどのようなものだろうか。
普段はきっと話すことはないであろう人々との対話の中で気づくことは多くある。来年も開催される予定なので特に学生には是非参加してみることをおすすめしたい。(オルタナS編集部=大下ショヘル)