こちらの講演は
松下政経塾政経研究所所長 金子 一也氏 (松下政経塾第12期生)
埼玉県所沢市議 桑畠 健也氏 (松下政経塾第9期生)
松下政経塾30期生 石井 真人氏
松下政経塾31期生 杉島 理一郎氏
の4名で行われ、金子氏司会の元、他の3名が自分の活動を通して感じている、行政との連携の必要性などについて語った。また、地域活性における現役世代と若者の橋渡しをするには、何を理解しなければいけないか?について一人ひとり自分の体験、活動内容を交えながら感じることを存分語ってもらった。

杉島さんは松下政経塾に所属しながら、中山間地域における地域活性について研究している。今は、中山間地域=条件不利地域という理解になっており、「条件不利地域に対しては
補助金政策で補う」というのが当たり前になっていた現状を指摘した。これから必要なのは、条件不利地域という前提を払しょくし、視点を変え、不利を活かしていくことだ。重要なのは地域に根差したブランドを作るとともにそのブランドが地域に愛され、地元住民が自ら「プロジェクト化して進めていこう!」と思うことであり、外からの押し付けではないことが一番大事だと教えてくれた。

石井さんは一次産業の中でも、あまり耳にすることが少ない林業について研究と活性化を行っている。「林業というのはどうしても、木を伐採してからし自分の手元に対価として帰ってくるまでに、とても時間がかかってしまう。そこに外国産の木材が大量に輸入されることにより、価格競争に負け、業界の衰退に繋がっている」と指摘した。

そこで石井さんは問題解決のために全国にある、間伐材を使って作ったお皿「KIZARA」を商品化し、低価格競争とは別の道を歩むことにした。3 times use(1、国産木材を使うことによって付加価値をつける 2、環境に配慮した製品を使う、3、そして「KIZARA」を利用後には燃やして燃料にすることにより、エネルギーの地産地消を目指す)を提案している。

しかしそこにはやはり行政の力が必要で、「KIZARA」の回収インフラの整備と同時に発電所や送電インフラ整備等の課題がある。「イノベーションが少なかった林業から新しいサイクル提案を地域へ、日本へ、そして世界へしていきたい」と強く語った。

最後に桑畠さん。桑畠さんはこの会の中で唯一、現行政を行っており、現場に立っている側としての貴重な意見が聞けた。今まで、地方というのは基本的に公共投資が雇用創出、人口増、域内生産増などに繋がっていた。そして一つの公共投資が収束化したら、また政治的な選択によって新しい公共投資を行うというサイクルを続けてきた。「こういった資本的な成長を追い続けることは、地域にとっては持続可能性がない。これからは地域の独自性を活かしながら、無理のない開発を行っていくべきだ」と語った。

<感想>
杉島さん、石井さん、桑畠さんみなさんが日本の抱える大きな問題に真剣に取り組んでいる方たちで、共通しているのは「地域と行政の繋がり方が見直すべきタイミングに差し掛かっているし、その変化は急務である」ということだと感じた。

今回のこの「VISIONS」がそうであるように、社会の中でこういった波が少しずつかもしれないが大きくなっている。改めて既存の「物差し」に対して、疑問を持ち、考え直してみることが必要だと感じる素晴らしい講演内容だった。

どんなに小さなことであってもかまわない。こうやってVISIONSのレポートを読むだけでももしかしたら何かのきっかけになるかもしれない。そんなきっかけ、少しの変化を積み上げて社会を、未来を自分の手に戻していこう。(オルタナS特派員 北川義樹)