森林農法で育つコーヒー豆(写真提供:ウィンドファーム)


メキシコ・プエブラ州の山岳部クエッツァラン市に、先住民ナワット族を中心とした農業生産者の組合「トセパン」がある。環境に配慮した「森林農法」による有機コーヒーやオールスパイス(香辛料)などの生産や、組合員への環境教育、独自の金融機関の運営を行っている。1977年にスタートし、現在約5300世帯が加入している。

トセパン組合で採用されている「森林農法(アグロフォレストリー)」とは、元々ある森林を残したまま、その中に複数の作物を植えていく栽培方法だ。森が残っているので様々な生物が共生でき、生物多様性も保たれる。

落葉によって土壌が豊かになり病害虫も発生しにくいので、農薬や化学肥料を使用せずに作物を栽培することができる。また、多種多様な作物を育てるので市場価格の変動に対するリスクが軽減され、比較的安定した経営を行うことができる持続可能な栽培モデルだ。

まコーヒーの生産段階で発生する廃棄物のリサイクルも行われている。コーヒーの果肉から有機肥料を作ったり、蜜を発酵させてアルコールを作ったりするなど無駄がない。トセパンで生産されているコーヒーはメキシコの有機認証である「Certimex」を取得しており、フェアトレード商品として販売されている。

トセパン組合は、コーヒー販売において高い仲介料を取る仲介業者に対抗し、自分たちの生活を守ろうと起こった組合運動から始まった。農業以外にも、マイクロクレジットや子供への環境教育にも力を入れている。持続可能な暮らしのモデルとして注目したい。(オルタナS特派員 猪鹿倉陽子)