灼熱の黒いアスファルトに這いつくばって草を取る丸い背中。一人暮らしの垰アイコさん(93)だ。手入れされた畑には冬野菜が育つ。

「長寿の秘訣?動くこと。やれることはやらしてもろうとる。わしゃね、起きたらまずカーテンをあけるんで」

ここは高齢化率49.9%の島根県南部の山の中、比之宮集落。2011年9月の厚生労働省の発表によると、島根県では、人口10万人当りの100歳以上の人数が75.70人にのぼり、日本一の長寿県となった。全国平均は37.29人である。

比之宮では、一人暮らしのお年寄りに手紙を書くサークル「四葉のクローバー」が活動していたり、集落全体で温泉に小旅行へ行ったり、老人会が注連縄を作っていたりするなどお年寄りが元気に暮らす取り組みが盛んだ。

アイコさんは、痛い足腰にムチを打ってまでどうして「動く」のか。単に体を鈍らせないことが目的ではないようだ。「カーテン閉じとると近所が心配するけぇな」。

「嫁御に面倒みてもろうとるが、皿洗いと洗濯ほどはやらしてもろうとります」。「ぼけたらいっそやれんでな、琴をしよる」。そんな話も聞く。

自分で出来ることはやる。古老たちは「~もらっている」と口をそろえて言う。支え合って生きてきた、決して豊かではなかった農村社会で、他人に余計な迷惑をかけまいとする「気」が彼女らの行動力のエンジンとなっているようだ。(オルタナS特派員=小川珠奈)