「国連ミレニアム開発目標」の8つの目標の中で、「極度の貧困と飢餓の撲滅」は最初に掲げる重要な目標の一つだ。貧困と飢餓を克服するため、インドとタンザニアで有機農業支援を行っているbioRe Project(ビオリ プロジェクト)を紹介したい。

オーガニックコットンの収穫


プロジェクトの母体であるbioRe基金 Remei AG社 社長のパトリック・ホフマン氏は、1990年代初め、綿のトレーダーの仕事をしていた。綿花の取引でインドを訪れた時、栽培農家の貧困の深刻さに驚き、なぜそのような状況なのか調べた。

貧しく識字率が低い多くの農民は、地域の有力者から高額な農薬や種を買わされ借金をする。綿を売る時には買い叩かれ、借金と利息を払うと僅かな金額しか手元に残らない。ホフマン氏は、栽培をオーガニックに変えることで、問題を解決しようと考え事業を興した。

事業内容は、利息なしの貸付、相場価格より上乗せ価格での買い取り、5年間の全量買い付けを保障するなど、綿の生産を安定させ、スイス・コープやイタリア・コープを通じて消費、流通する仕組みだ。

栽培から生産まで、エコロジー(化学農薬を使用しない)公正性(尊厳のある労働環境の提供)、トレーサビリティ―(透明性)の維持を指導する。そして第三者認証機関の有機栽培、フェアトレードの認証を取得し、飲料水の井戸作り、子弟の教育施設建設、医療サービスなどを行っている。

メンバー企業 パノコトレーディングの協力による井戸掘り


一般のコットンとオーガニックコットンでは、見た目は同じでも意味合いが違うものだと判る。オーガニックコットンには、値段が高い正当な理由があり、普及させなくてはならない理由もある。

2010/11年オーガニックコットン生産量の全コットンに占める割合は、0.7%だそうだ。不安定な世界経済、GMO(遺伝子組み換え)の種の席巻、大手企業がコストを考えオーガニックから離れ、規準が緩い素材を主流にするなどの影響で需要が伸び悩んでいる。「100%オーガニックコットン」の信頼性と最貧国の未来を、私たち消費者が決めている。(オルタナS特派員=奥田景子)


取材協力:特定非営利活動法人 日本オーガニック流通機構 http://www.noc-cotton.org