「結婚式があってなぜ離婚式はないのか」。そんな素朴な疑問から生まれた、離婚する2人がけじめをつけるための「離婚式」が注目を集めている。これまで100組以上の「元」夫婦が離婚式をあげた。一方、式で参列した友人や親戚から励まされ、離婚を思い止まったカップルも9組いるという。



離婚式プランナーの寺井広樹氏は、幼いころから「日本は卒業式、引退式など終わりを大切にする国。結婚生活の終わりでなぜ離婚式がないのか」という疑問を抱いていた。大学時代の先輩の離婚式を執り行ったことがきっかけで、離婚式のプロデュースを行うようになった。

元夫婦が離婚式をあげるのは「式を挙げることでしっかりとけじめをつけ、良い形で再スタートを切りたい」という理由からだという。また、「結婚式では遠方から多くの人に参列いただいたので、きちんと公の場で離婚も報告したい」という声もある。

離婚式で象徴的なのは、式の最後に行われる蛙(独身に「かえる」という意味)のハンマーで結婚指輪を叩き割る場面だ。それまでは拍手をしてもいいものか微妙な雰囲気だった会場も、2人の吹っ切れた表情を見て、温かい拍手に包まれる。




東日本大震災後は問い合わせが約3倍に増えたという。被災地へボランティアに行った女性は3年前に離婚した元夫と離婚式を挙げた。彼女は離婚後「結婚なんてもうこりごり」と感じていた。しかし避難所で家族が支えあう姿を見て「家族ってやっぱり素晴らしい!」と感じ、結婚願望が高まり、帰京後に再婚相手と出会った。そして「過去の結婚生活にきちんと区切りをつけたい」と元夫と離婚式を挙げるに至ったという。

今後は「挙式後のアフターケアとして、離婚式を挙げた元夫婦を対象にマッチング(お見合い)も力を入れていきたい」と寺井氏は語る。「結婚には懲りたけれど、パートナーが欲しい」という相談は少なくないという。

離婚という別れを前向きに捉え、再出発するための「離婚式」。さまざまな幸せの形が模索される現代で、幸せのきっかけを提供していってほしい。(オルタナS特派員 猪鹿倉陽子)

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