――保険事業にとって「グリーンエコノミー」とは具体的に何を指しますか。

佐藤:私たちが地球環境に貢献する分野は2つあります。それは「適応」と「緩和」です。
「適応」とは、地球温暖化のさまざまな被害を、私たちの力で賢くカバーしていくことです。

一方「緩和」とは、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギー活用をはじめ、地球温暖化の度合をできるだけ少なくするよう努力することです。ただし、新しい技術を普及させるにはリスクがつきものです。私たちはリスクマネジメントのプロフェッショナルとして、そういう様々なリスクに対して解決策を提供することにより、温暖化を防ぐ技術の開発や普及のお手伝いをしていきたいと考えています。

ですから、私たちにとっての「グリーンエコノミー」は、直接グリーン化を牽引するというより、グリーン化のための基盤づくりに貢献し、グリーン化を加速することを指しているといえると思います。

「守りのCSR」と「攻めのCSR」

――損保ジャパンはNPOや学生、社会起業家らへの支援を行っていますが、その意義はどこにありますか。

佐藤:今までのCSRは「守りのCSR」でした。企業は利益を出して、税金を払い、雇用を維持することが一番でした。そして、時代とともに、コンプライアンスやリスク管理をしっかり行うことがCSRと認識されるようになりました。さらにプラスして社会貢献活動を行うことも当たり前になりました。ただしこれは事業活動とは別の部分で実施しているという感が否めません。

ところが、現在は、本業を通じて社会的な問題の解決に取り組むCSRが必要とされています。いわゆる「攻めのCSR」です。

今、グローバルで最も関心が高い社会問題といえば、地球環境問題や貧困問題などでしょう。企業は自らを支えてくれる社会が安定しかつ健康でなければビジネスを展開できません。そのため、もっとこういった課題の解決のために本業として取り組んでいかなければいけません。このような取り組みを「攻めのCSR」と呼んでいます。

例えば、2011年、タイでは大規模な洪水が起きましたが、それまでは干ばつが頻繁に起きていました。農民たちは、なすすべがありませんでした。そのような気候変動の影響に脆弱な地域に対して何かできないかと考え、損保ジャパンは、国際協力銀行やタイの農業協同組合銀行などと連携して「天候インデックス保険」という商品を開発しました。

天候インデックス保険は、稲作農家の干ばつによる損害の軽減を目的とした商品です。具体的にはタイ気象庁が発表する累積降水量が一定値を下回った場合に、農民の方に一定の保険金をお支払いして、農耕具のローンを軽減します。2011年はタイの5県で募集を行ない、6,173件の加入がありました。まだ事業としては微々たるものですが、途上国を支援しながら将来的には成長市場でのビジネス資源へとつなげていきたいのです。こうしたことが「攻めのCSR」の取組みの一例です。


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