――20世紀の資本主義で多くの問題が吹き出しましたが、21世紀はその修正が必要です。佐藤会長は本来の資本主義のあるべき姿はどのようなものをお考えでしょうか。

佐藤:東日本大震災以降、私たちはエネルギーをこれ以上無制限に使うことはできないと分かりました。環境保全と経済活動を両立させるために、効率的なエネルギー利用が求められています。これについてまだ答えはありませんが、公害問題を乗り越えた日本人ならできるはずです。

また、20世紀と違う点として、21世紀は企業だけでなく、NPOなどの民間非営利組織や、公的な組織と手を取り合いながら、環境活動と経済活動を両立をめざしていく時代になりつつあります。

今は背景や価値観が違うもの同士が共に一つの課題に向かって議論し合い、答えを出す時代です。政府・行政だけでなく、企業・NPOなどの多くの主体がそれぞれの力を組み合わせ、連携して問題の解決に取り組む必要が高まっています。

即ちマルチステークホルダー参加による新しい課題解決の仕組みが求められる時代が到来しているのです。様々なステークホルダーの対話やNGOとのパートナーシップを重ねることが、社会に新たな価値を生み出す。そのような時代にリーダーシップを発揮し、主体的に活動するセクターとして、企業への期待は大きいと思っています。

■加入者の被災状況を一軒ずつ確認

――損保ジャパンは東日本大震災発生後、現地で迅速な調査を行い、被災者への支払いを早急に行ったといいますが、具体的にはどのような対応を心掛けたのでしょうか。

佐藤:損保ジャパンでは、東日本大震災への対応として発生直後から東日本12か所に災害対策本部を設置し、全国から最大で約3000名の社員を派遣し、避難所や家を一軒ずつ回り、被害状況を確認して調べるなど、一日でも早くお客さまに保険金をお支払いできるよう社員・代理店が一丸となって懸命に取り組みました。

その結果、震災発生3か月の時点で約90%の支払いが完了し、半年後には業界全体で約70万件、1.2兆円の支払いを実施することができました。これは過去最大の支払額です。ちなみに阪神淡路大震災の時の業界全体での支払額は783億円でした。さらに個人のお客さまに支払った1兆2千億円とは別に、企業のお客さまに対しても地震保険金として約6,000億円をお支払いしています。

緊急時にはスピードが勝負だと思っています。善意の義援金がなかなか手元に届かないという状況も報じられていましたが、個人のお客さまへの地震保険金は3か月でほとんどお支払いすることができました。

日本では1966年に地震保険制度ができました。大規模災害である地震への補償は、「地震保険に関する法律」に基づき、政府と損害保険会社が共同で運営する仕組みになっています。また本来、地震保険金は建物や家財を復旧させるために使われることを目的としていますが、生活再建のためのまとまった資金としての効用もあり、支払い時に多くのお客さまから感謝の声をいただきました。

世界各地で大規模な自然災害が増加していく中で、官民それぞれの強みをうまく組み合わせた制度である日本の地震保険スキームは、官民の役割分担の好事例として世界の参考になる仕組みだと感じています。

■「火事場に駆けつける」ことが使命

――「一日でも早くお客さまのために」という考え方は、御社のCSRの哲学から来ているのでしょうか。

佐藤:そうですね。保険会社の使命は「困った人を助ける」ことです。突然大変な状況に置かれ経済的にも困っている人に対して、ややこしいルールを長く説明して、支払いを遅らせることは、企業の社会的責任を果たしているとはいえません。

今回はとにかく「早く」対応することがテーマでした。その意味で、全国から応援にかけつけた約3,000名の獅子奮迅の活躍は、たのもしかったですし、うれしかったですね。
当社社員が「少しでも早く保険金をお届けする」という信念を持ち、被災者の皆さんと直に接しながら業務を全うすることで、帰ってきた時に「困っている多くのお客さまのお役に立てて良かった」という声を多く聞きました。涙を流して感謝の言葉を述べられたり、熱い抱擁をして頂いたりなどの体験もあったようです。

普段コンピュータセンターなどでパソコンの前で座って仕事をすることの多い社員も、応援に行って実際にそのような体験をして、とても感銘を受けていました。社員にとって学びが多かったと思います。

――損保ジャパンのCSR哲学は、どのようにして生まれたのでしょうか。

佐藤:損保ジャパンの原点は、東京火災という日本で初めて設立された火災保険会社です。東京火災は社内に「東京火災消防組」という私設消防隊をもっていました。そしてそのルーツは江戸時代の「火消し」なのです。昔の消防組は、火事が起こるとすぐに現場に向かい、身にまとった印半纏(しるしばんてん)に水をかけ、鳶口(とびぐち)を使って、延焼を防ぐためにお客さまの家にいち早く駆けつけました。そのDNAが今も生きているのです。

そもそも保険事業というのは、江戸時代の地域社会にあったような、助け合いの仲介が原点です。国や自治体が助ける「公助」と自分自身で行う「自助」。その中間にあるのが、「共助」という考え方。国の支援では不十分だったり、自分自身ではどうにもできなかったりする人々を、みんなで助けあいながら生きていける社会を作っていきたいと考えています。そういった考えが当社のCSRの哲学として、生きていると思います。

CSRは社員の「誇り」にもつながります。会社に対する誇りがあると、常にこのことはやって良いのか、悪いのかの判断をぶれることなく下すことができます。社員には企業の中にいても外にいてもそれぞれが判断のよりどころとなるコモン・センス(常識)を持ってほしいのです。そのために社員全員の誇りを保つことができるCSRを浸透させていくことが重要だと思っています。

■チェンジ・チャンス・チャレンジ

――最後に、オルタナSの中心読者である学生や若者たちにメッセージをお願いします。

佐藤:今は若い人が海外に行っていないなどの声がありますが、実際はそんなことはなく、青年の船などには若い人がたくさん乗っていますし、先進国だけでなく途上国に目を向けてさまざまな社会的課題の解決に熱心に取り組む若い人も大勢います。

激動の時代を迎え、昔よりも若い人が活動できる場所が広がっています。様々な分野で多くのチャンスの機会があるのだから、待っているのではなく、ぜひチャレンジしてほしいですね。

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