トヨタ自動車株式会社が運営する環境学習施設「トヨタの森」(愛知県豊田市)。1997年の開設から2012年2月までの来訪者は子どもを中心に10万人を超す。森の中を案内するインタープリター(里山案内人)の原田けいこさんは「私たちは虫や花の名前を教えるのではなく、その間にあるつながりの大切さを伝えています」と語る。(聞き手・オルタナS特派員=池田真隆)

——1998年からトヨタの森でインタープリター(里山案内人)として働かれていますが、子どもたちには、森の中にいる生きものたちのつながりを教えているそうですね。

原田:私たちインタープリターは、単に虫や花の名前を教えるわけではありません。虫や花や木の間にあるつながりの大切さを教えています。このつながりがあることでそれぞれの生きものたちが生きていられることを、嗅覚や味覚などのワンダーパワー(五感)を通して体感してもらいます。

バッタを虫眼鏡が観察する子どもたちと原田さん(写真右下)



■自分の頭で考える力を養うワンダーパワー

——そのようにして子どもたちに教えるときに、「ワンダーパワー」を感じてと言うそうですが、子どもたちにワンダーパワーを教えようと思った背景はなんでしょうか。

原田:子どもたちはもともとすごく豊かな才能を持っています。

その才能をどのように活かし、受け止め、引出すかは私たち大人にかかっていると思います。、子どもたちには大人になる前に、自然の中で様々な感覚を解放して、森の匂いや空気、音などをぜひ体中で感じてほしいと思っています。

よく私は子どもたちに森の中で葉っぱを食べさせるのですが、「おいしい、まずい」だけではなく、「どんな味だった?」と聞くように心がけています。すると、「トマトについている緑色のヘタのような味がする」といった、驚くような答えが返ってくることがあるのです。それはトマトのヘタを食べた体験から言えること。言葉が返ってくるような問いかけをすることで、自然の中から表現力を身に付けるきっかけとしています。




——ワンダーパワーを感じた子どもは何を得るのでしょうか。

原田:ワンダーパワーを感じることによって、自分の頭で考える力を養います。
例えば、森の獣道で転んだら、なんで転んだのかを自然と考えるようになります。そして、自分の頭で転ばない解決方法を考えて、実践していきます。机の上だけでは学べない力を養うことができるのではないでしょうか。

■ほかでは体感できない楽しさを味わいに来て欲しい

——森の中で、遊びながら学べるということが一番の魅力だと思いますが、トヨタの森にはいくつか有名なスポットがあるそうですね。

原田:トヨタの森には、一休みの木と名付けられた木があります。その木はちょうどイスのような角度で曲がっていて、木の面もスベスベしているので座り心地も良いです。

ひと休みの木


この木を例にして、子どもたちには「休」という字を教えています。人が森の中で一休みしようと木に寄りかかっている姿から「休」という字ができたと伝えています。

また、森の坂道を走りながら勢いよく下ることでスリル満点な気分を味わえる場所もあります。子どもたちからは「ジェットコースターみたいで楽しい」との感想が出ています。

トヨタの森に来た人たちには、普段の生活から解放されて思いっきり自然を感じてほしいです。遊具のある遊園地も充分楽しめますが、そこにはない楽しさや新たな出会い、発見が森にはあります。ぜひ、いらしてください。


トヨタの森