築69年の郵便局舎を改装した、カフェ&ギャラリーcolissimo「コリシモ」(兵庫県篠山市)が3月10日(土)にグランドオープンし、オープニング展覧会「絵封筒展2012」を4月8日まで開催している。



展覧会のテーマ「絵封筒」は、このギャラリーが20年前まで郵便局舎だったことに由来する。絵封筒とは、水彩やペンで自由に絵が描かれた封筒だ。筆跡や紙、絵の具の質感にまで送り主の相手を思う気持ちがこもる絵封筒は、今ひそかに見直されつつある温かなコミュニケーションツールだ。元々は50年ほど前にイギリスの絵本作家たちが遊びでやっていったものが、近年日本でも静かなブームになっている。

今回の展覧会で多数の所蔵作品を提供する絵本編集者の松田素子さんは、以前自身が絵封筒展を開いたとき来場者の姿に驚いたという。当初松田さんは、絵封筒は便利な世の中の流れに逆行したものだと考え、人々に本当に受け入れられるのかと思っていたそうだ。

しかし展覧会が始まると老若男女問わず多くの人が、その場で絵封筒を作ることに夢中になった。松田さんは、人々の多くが無意識に気持ちの伝え方を探していたのだなと思ったという。

その後も松田さんの元には絵封筒に感謝する声が届けられた。あるパーキンソン病患者は体の不自由な自身の姿に同情されることが嫌で、同級生との付き合いも絶っていたという。

だが、ある時絵封筒を同級生に送ったことがきっかけで、自分の表現したものが他人に認められる嬉しさと、自分のことを同情の目でなく、素直に見てもらう喜びを感じることができたという。このほか、絵封筒で理不尽な叱り方をしてしまった子供に謝った母親や遠距離恋愛を成就させたカップルもいるという。

人と人とのコミュニケーションが粗末にされていく中で、絵封筒は1人の相手とじっくり向き合うきっかけを与えることができると松田さんは語る。

絵封筒の他にもcolissimoでは今後も次世代に残したい「もの」や「こと」を発信していく。その昔この場所が郵便局だった頃と同じように、これからも人と人との交流が生まれる場所を目指している。なお、展覧会は4月8日までの毎週末に行われる。
(オルタナS関西特派員橋本翔一朗)